【魚ビジネス】鮮魚チェーン「角上魚類」の快進撃を支える「お魚コンシェルジュ」としての役割 「魚は対面販売が一番売れる」と言われるのはなぜか
スーパーでの魚の対面販売が難しい理由
多種多様なものが日々違う状況で入荷する。これこそが、魚という生鮮食品の最たる特徴です。このような扱いの難しい食材は、置いておくだけでは売れません。 私たちは普段、電球のようなわかりやすい商品であれば特に考えずに買いますが、パソコンのような複雑な商品の場合は、調べたり、店員に聞いたりして買うのが普通です。魚の場合は、お店に置いてあるものが激しく変わるため、調べて知識をつけるよりもその場で店員に聞いた方が早い状況です。 このような状況だからこそ、「お魚コンシェルジュ」の立ち位置は重要で、今でも「魚は対面販売が一番売れる」と言われる所以なのです。 「なるほど。だったらスーパーでも対面販売をやればいいではないか」と思われるかもしれませんが、これには難しいところがあります。 なぜなら、他の食品はこれと真逆な状況だからです。例えば、肉であれば、種類は牛・豚・鳥の3種と少なく、冷凍流通が主で、日々の仕入れがダイナミックに変化しません。このような場合は、日々画一的な対応を組み立てる方が効率的です。 魚は本来、臨機応変な対応をした方が売れる商材です。これは画一的なものを大量に提供する方が効率的という、肉などの他の食品やスーパーという形態とは真逆です。しかし、時代が進むにつれてマス消費が進み、流通を画一的に整える動きが広がり、魚もそれに合わせなければいけなくなりました。 このような画一的な流通では、なるべく人為的な部分を排除し、マニュアル化やシステム化を進めた方が効率的です。その結果、人件費が削減されていくのです。 では、対面販売のような臨機応変な対応をするにはどうすれば良いでしょうか。これには、マニュアルでもシステムでもなく、人が対応するしかありません。 そして、臨機応変な対応が可能になれば、魚は売れるようになります。これが、「人件費を掛けられると魚屋の売上が伸びる」の理由です。 ※ながさき一生・著『魚ビジネス』より一部抜粋して再構成。 【プロフィール】 ながさき一生(ながさき・いっき)/1984年、新潟県糸魚川市生まれ。株式会社さかなプロダクション代表取締役、東京海洋大学非常勤講師。漁師の家庭で家業を手伝いながら18年間を送る。2007年、東京海洋大学を卒業後、築地市場の卸売会社で働いた後、同大学院で修士取得。2006年からは魚好きのコミュニティ「さかなの会」を主宰。漁業ドラマ『ファーストペンギン!』では監修も務める。著書に『魚ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)。
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