新刊刊行記念「初顔合わせ」対談!「色気のある男」も「クズ男」も書いていく(桜木紫乃×町田そのこ)
大好きです!――作家が作家に、ストレートに愛情をぶつけたとき、どんな化学反応が起きるのか。直木賞作家・桜木紫乃さんと本屋大賞作家・町田そのこさんが初顔合わせ。パンチパーマからストリップ、そしてクズ男へ。緊張から始まった対談は、予測不能な広がりを見せ……。 【写真】二人の作家の初顔合わせ対談に迫る 桜木紫乃 (さくらぎ・しの) 1965年北海道釧路市生まれ。2002年「雪虫」でオール讀物新人賞を受賞し、ʼ07年同作を収録した単行本『氷平線』でデビュー。ʼ13年『ラブレス』で島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で直木賞、ʼ20年『家族じまい』で中央公論文芸賞を受賞。他の著書に『硝子の葦』『起終点駅』『霧』『裸の華』『ふたりぐらし』『緋の河』『ヒロイン』『谷から来た女』などがある。 町田そのこ (まちだ・そのこ) 1980年福岡県生まれ。2016年「カメルーンの青い魚」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。翌年、同作を収録した単行本『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。ʼ21年『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞。他の著書に『ぎょらん』『うつくしが丘の不幸の家』『星を掬う』『あなたはここにいなくとも』『宙ごはん』『夜明けのはざま』などがある。
細胞に呼びかけられている
──桜木紫乃のファンだと公言して憚らない町田さんですが、桜木作品との出会いはなにがきっかけだったのでしょうか? 町田まず最初に、友人が『ラブレス』を教えてくれたんです。「あなたは絶対好きだから読みなさい」とすごい勢いで。それで一晩で読んでしまい、この人はすごい……となって、翌日には書店に走って、他の著作を買いあさりました。 桜木それはありがとうございます。 町田桜木さんの本には付箋をいっぱい貼っています。これまで自分のなかで言葉にできなかった思いや、誰にも伝えられないでいた感情が書かれていて、それらの言葉を読むたびに、どうしてわたしのことを知っているのだろうと深く抉られるのです。今回の『起終点駅』の文庫解説では、そういった思いを込めて「心ではなく細胞に呼びかけられている」と書かせていただきました。 桜木熱いメッセージありがとうございました。「無縁」というテーマで書き始めた短編集でしたが、書き終えたときにはなぜか「無縁は、ない」という答えに達していたのを覚えています。解説っていうのは文庫の巻末にあって、たしかに読者に向けたものではあるのだけれど、実は作者がうまく言葉にできなかったところを開いて見せてくれる働きもあるんだって、しみじみ思いました。 町田好きな作家さんに対して皆さん感じたことがあると思うんですが、その人の本をどんどん読んでいくと、残りが少なくなっていくじゃないですか。それがどうにも耐えられず、最後のほうは全部読んでしまっていいのだろうかという葛藤と闘いながら読んでいました。 桜木がんばって新しいのを書かないとならないですね(笑)。町田さんの『52ヘルツのクジラたち』、よかった。孤独の意味が時代とともに変化しているいま世に出すべき物語で、町田さんは時代に必要とされる作家なんだ、と感じました。 町田光栄です! 未熟な点ばかりですが、桜木さんがそう仰ってくださるなら、信じて頑張っていく……! 桜木さんにはずっとお会いしたくて、中央公論文芸賞を受賞されたとき(註・二〇二〇年に『家族じまい』で受賞)、パーティに行けば会える! とワクワクしていたのに、コロナで贈呈式は中止。中公の担当者に文句の電話をしてしまいました。