500円で駅まで送迎 「高齢者ライドシェア」移動支援だけじゃない地域への効果 #老いる社会
今でも移動スーパーで配達で買い物を済ませ、ほとんど家から出てこない独居高齢者もいるという。それでも生活はできるのかもしれないが、外へ出て人に会うことの意味は大きい。ドライバーとして活動している佐々木トシ子さん(71)は語る。 「私がよく乗せている方は、家の中まで迎えに行くのですが、私が行くときにはいつも部屋をきれいにしています。そのことにご家族の方が大変驚いていました。やっぱり人が来るとなれば部屋もきれいにするし、見た目も気にする。生活に張り合いが出るんです」 都市と地方の経済格差が拡大し、少子高齢化も加速する現在の日本社会において、「交通弱者」への対応は急務だ。これまでは、それを「交通政策」の枠組みで考えるのが一般的だったが、土船地区の取り組みは、高齢者が地域でより豊かに暮らせる社会=福祉をつくっていくことにまで視野を広げた。これは今後の地方の在り方を考えるうえで一つの回答になり得るかもしれない。
「#老いる社会」はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。2025年、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となります。また、さまざまなインフラが老朽化し、仕組みが制度疲労を起こすなど、日本社会全体が「老い」に向かっています。生じる課題にどう立ち向かえばよいのか、解説や事例を通じ、ユーザーとともに考えます。 --------- 小川匡則(おがわ・まさのり) ジャーナリスト。1984年、東京都生まれ。講談社「週刊現代」記者。北海道大学農学部卒、同大学院農学院修了。政治、経済、社会問題などを中心に取材している