なぜJ1残留争いに最下位から9チームが勝ち点7差の大混戦が生まれたのか
優勝争いがサンフレッチェ広島と川崎フロンターレにほぼ絞られた終盤戦のJ1リーグに、かつてない「異変」が発生している。10位から最下位までの9チームが勝ち点7ポイント差のなかにひしめき合うなど、今週末に行われた第27節をへて残留争いが一気に混沌としてきたからだ。 第25節までに泥沼の5連敗を喫し、最下位に転落していたのは初めてJ1を戦うV・ファーレン長崎。しかし、7連勝中だった名古屋グランパスとの壮絶な打ち合いを4‐3で制した前節に続き、22日には上位をうかがっていた好調のベガルタ仙台を1‐0で振り切った。 順位は依然として最下位で変わらないものの、勝ち点を「27」にまで積み上げてきた。J1が18チーム制になった2005シーズン以降の最下位チームの勝ち点を比較してみると、実は2009シーズンのジェフユナイテッド千葉の「27」が最多となっている。 7試合を残した段階で長崎が9年前の千葉の勝ち点に並んだ状況は、イコール、残留に必要な勝ち点のボーダーラインが跳ね上がったことを意味する。これまでに15位で残留したチームの平均勝ち点は「37」だったが、今シーズンは少なくても「40」が求められるかもしれない。 未曾有の大混戦となった理由は、ワールドカップ・ロシア大会開催に伴う中断期間に入った時点で16位以下の降格圏に沈んでいた3チーム、ガンバ大阪、サガン鳥栖、そして名古屋がチーム再建へ向けて振るった大ナタが現時点で奏功しているからだ。 開幕から不振が続いていたガンバは7月23日に、今シーズンから指揮を執っていたブラジル人のレヴィー・クルピ監督を電撃解任。バトンを託された元日本代表のキャプテンでクラブOBの宮本恒靖氏は就任当初こそ苦戦を強いられたが、ボランチの今野泰幸が復帰した9月以降は今シーズン初の3連勝をマーク。勝ち点を「30」にまで伸ばしてきた。 中断期間中に元スペイン代表のエースストライカー、フェルナンド・トーレスを獲得。アンドレス・イニエスタを獲得したヴィッセル神戸とともに世界を驚かせた鳥栖は、直近の8試合で4勝3分け1敗と復調。そのうち6試合で相手を零封するなど持ち前の堅守も復活し、こちらも勝ち点を「30」に伸ばしている。 そして、名古屋は最終ラインに丸山祐市(FC東京)、中谷進之介(柏レイソル)、金井貢史(横浜F・マリノス)、ボランチにエドゥアルド・ネット(川崎)、前線に前田直輝(松本山雅FC)と各チームの主力を次々と補強。前半戦とまったく異なる陣容に生まれ変わった。