なぜJ1残留争いに最下位から9チームが勝ち点7差の大混戦が生まれたのか
さらには前半戦で精彩を欠いていた新加入のFWジョーが、元ブラジル代表の肩書にふさわしい実力をいよいよ発揮。8月以降で出場した7試合で14ゴールを量産したジョーにけん引される形で、長くあえいだ最下位から脱出。破竹の7連勝を達成した第25節では11位にまで浮上し、中位をうかがう勢いすら見せていた。 しかし、前述したように前節では長崎に逆転負けを喫した。連覇へ向けて調子を上げてきた川崎のホーム、等々力陸上競技場に乗り込んだ22日の第27節は真価を問われる一戦だったが、前半20分にオウンゴールで先制を許すと、同34分にはMF阿部浩之に強烈なミドルシュートを叩き込まれる。 後半14分に前田が1点を返したものの、わずか4分後にFW小林悠に3点目を決められた時点で万事休す。順位こそ13位ながら14位の湘南ベルマーレと勝ち点「31」で並び、わずか1ポイント差で鳥栖、柏レイソル、ガンバに肉迫されるなど、再び残留争いの渦中に巻き込まれた。 2016シーズンまで約5年間指揮した川崎に、独自のポゼッションサッカーを伝授。昨シーズンに成就させた悲願の初優勝の土台を作り、自身は名古屋を率いて2年目になる風間八宏監督は、試合後の公式会見で「目に見えていないものを相手にしてしまった」と古巣に完敗した要因をあげた。 「どのようにしたら相手を外せるか。自分がいつもフリーという状況でパスを出して寄る、あるいはパスを出してもう一度もらい直す。全員がそれをやり続ければ、フリーの定義で言えば相手のプレッシャーをすごく軽減できるんですけど、ちょっとしたところで相手の勢いを全部受けてしまった」 川崎に続いて名古屋でも実践しているのは「ボールを止める、蹴る、動く」を絶え間なく繰り返して試合を支配すること。しかし、同じスタイルを追求するがゆえに、相手にやられて嫌なことを川崎は熟知していた。全員が攻撃から守備へ常に素早く切り替え、名古屋の「動く」を封じ込めることで、時間の経過とともにストレスを溜め込ませた。