なぜJ1残留争いに最下位から9チームが勝ち点7差の大混戦が生まれたのか
テクニシャンがそろう川崎が見せた気迫、あるいは球際で発動された執念に後塵を拝し、後手を踏み続けた光景。それを指揮官は「当たり前のものが当たり前に見えないといけないのに、自分たちのなかで錯覚を起こしてしまった」と独特の表現で振り返り、まだまだ改革途上にあると位置づけた。 背後に迫ってきていたMF家長昭博のプレッシャーを感じたことで、ヘディングによるクリアが中途半端な形となってオウンゴールとしたMF和泉竜司は「相手というよりは自分自身に負けた。納得がいかないというか、自分に腹が立つ」と前半限りでベンチへ下げられた一戦を振り返った。 「相手のプレッシャーにビビったというか、自信がないようなパスの回し方やプレーの選択になってしまった。まだ残留争いを抜け出したわけじゃないし、さらに(勝ち点差が)縮まったと思うので、もっと強い気持ちをもってやらないと。下を向いている暇はないので」 今シーズンのレギュレーションでは、17位と最下位の2チームがJ2へ自動降格。16位のチームは新たに導入されたJ1参入プレーオフへ回り、J2の3位から6位までの4チームによるトーナメントを勝ち抜いたチームをホームに迎えて、一発勝負で残留をかける。 台風の影響で消化試合数が1試合少ない名古屋と湘南を除けば、残りはわずか7試合。勝ち点が伸び悩む10位の清水エスパルス(34ポイント)、11位のジュビロ磐田(33ポイント)、後半戦で連勝がない横浜F・マリノス(32ポイント)に加えて、23日の対戦結果次第では神戸(36ポイント)、浦和レッズ(35ポイント)の負けた方も残留争いに巻き込まれるおそれすらある。 1‐1の痛み分けに終わった22日の柏と鳥栖のように、残留を争う当該チーム同士の直接対決も毎節のように組まれている。横浜F・マリノスと鳥栖以外は、優勝を争う広島あるいは川崎との対戦も控えている。勝ち点だけでなく得失点差、そして総得点までを考慮しながら、肉体だけでなく精神面をも激しく消耗させる熾烈な戦いは12月1日の最終節まで続く。 (文責・藤江直人/スポーツライター)