韓国大統領は「過激派YouTuber」に影響された可能性…突如起きた「戒厳令」で日本が直面する最悪のシナリオ
■「民主主義国家」の評価は低下へ 尹錫悦大統領が「非常戒厳」を宣布したあと、与野を問わず議員らが国会議事堂に集結し、戒厳の解除を求める決議案を全員一致で可決したことから、日本では韓国の民主主義の堅固さを評価する声もある。確かに、国会周辺に大勢の市民が集まって抗議の声を上げるなど、印象的な光景が展開された。 しかし、戒厳令という異例の事態に、韓国の民主主義に対する評価の低下は避けられそうにない。 世界各国・地域の民主主義の指数を発表しているV-Dem(Varieties of Democracy)研究所は、2024年3月に発表したリポートの中で韓国について、自由民主主義指数(LDI)のランキングで前年の28位から47位に下落したとした上で(日本は30位)、その理由として、尹錫悦政権下で「文在寅(ムン・ジェイン)政権期の閣僚らを処罰する強圧的な措置」や「男女平等に対する攻撃」が行われたことを挙げている。 韓国は依然として自由民主主義国家のカテゴリーにあるとしながらも、民主化のあと間もなく権威主義化へと転換する「ベル・ターン」の現象が見られるとしている。 このリポートについては、韓国メディアの一部から「基本的な事実関係の調査に誤りがある」などといった批判もあるが、広く用いられている国際的な民主主義指標で韓国がそのように位置づけられていることも事実である。2025年のリポートでは、今回の「非常戒厳」を受け、指数のさらなる下落は避けられないだろう。 ■「ひどく判断を誤った」 尹錫悦大統領の唐突な戒厳令は、米韓や日米韓3カ国の連携に影響を及ぼそうとしている。アメリカ政府高官から一斉に厳しい批判が出ており、ブリンケン国務長官は尹大統領が戒厳令を出した意図はわからないと述べ、サリバン国家安全保障担当大統領補佐官も「ほかの国々と同様、テレビで知った」と明らかにした上で「深い懸念」を表明した。 特にキャンベル国務副長官は、「尹大統領はひどく判断を誤ったと思う」と直裁に批判した上で、「かつての戒厳令の記憶は、深く、否定的な響きを残している」と指摘し、44年前となる前回の戒厳令は大勢の市民に犠牲者をもたらした「光州事件」に繋がったことを想起させようとした。 「非常戒厳」のあと、米韓両政府は、ワシントンで開催を予定していた「核協議グループ(NCG)」の会合を延期したと報じられている。日韓の間でも、12月に予定されていた中谷防衛大臣の韓国訪問と日韓議員連盟の会長の菅元総理大臣の訪韓がそれぞれ延期された。日米韓3カ国の協力に実際上の影響が出始めているのである。 日米韓3カ国は2023年8月、米キャンプ・デービッドで首脳会談を行って3つの成果文書で合意し、三カ国の協力の制度化が図られた。 2024年11月の日米韓首脳会談では、協力の強化に向け、事務局組織を設置することでも合意している。トランプ次期政権発足後も制度的に協力を進めようという狙いである。その矢先に尹大統領が日米韓の連携強化に水を差す形となった。先のキャンベル副長官の厳しい発言は、その文脈から理解することができる。