なんと、重さの単位は「グラム」ではなかった…!弱く孤独な重力の「不思議な特徴」を解き明かす
あっと驚く面白さ。誰でも理解できる爽快さ。 アメリカの大学で長く物理学の人気教授として活躍してきた山田克哉さんの「白熱講義」から生まれた、ブルーバックスを代表する人気企画「からくりシリーズ」。 そのシリーズ最新刊である『重力のからくり』がベストセラーとなっています。「弱すぎる重力」はなぜ、宇宙を支配する力になりえたのか? 万有引力のふしぎを徹底的に解き明かす同書の読みどころを厳選してお送りします! *本記事は、『重力のからくり――相対論と量子論はなぜ「相容れない」のか』の内容から、再編集・再構成してお送りします。
万有引力の発見
「重力」とは、なんでしょうか。 私たち人類が、正式に重力と出会ったのは今から3世紀半ほど前、1687年にアイザック・ニュートンが『自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)』を刊行し、「万有引力」に関する包括的な法則を発表したときのことです(ニュートン自身は万有引力について、1665年か1666年には発見していたと言われています)。 質量をもつあらゆる物体、すなわち万物が、互いに互いを引っ張り合う力を及ぼしあっている──「万有引力の法則」が登場したことで、私たちは重力の存在をはっきりと認識するようになりました。 しかし、実際にはそのはるか以前から、人類は、日常的な感覚や体験を通して「重いものに起因するなんらかの力」が存在していることを、おぼろげながらに知っていたものと思われます。 たとえば、「重いものを持ち上げるにはそれ相応の力が必要である」ことや、「高いところから重いものを落とすと、勢いを増しながら落下したその物体の衝撃によって、真下にあったものが壊れる」といった現象については、ニュートン以前の人たちも肌に感じていたことでしょう。
「重さ」とはなんだろう
ところでみなさんは、「重いもの」と聞いて何を思い浮かべますか? 資料やモバイルコンピュータを詰め込んだ通勤・通学用のバッグやバックパック、あるいは引っ越し荷物の入った段ボール箱でしょうか。筋トレに励んでいる人なら、バーベルや鉄アレイかもしれませんね。 では、これら重いものの「重さ」とはなんでしょう? バッグや荷物なら重量計に載(の)せることで「~kg(キログラム)」と表示されますし、バーベルや鉄アレイであればそれ自体に「2kg」とか「10kg」といった数字が記載されています。そのため、「重さ=kgの単位で表されるもの」と考えている人が多そうです。 その証拠に、体重を訊(き)かれたら、「60kgです」などと答えるのがふつうです。 ところが、重さの単位は「kg」ではないのです! もちろん「g(グラム)」でも、はたまた「t(トン)」でもありません! だとしたら、重量計が示すあの数値は、いったい何を意味しているのでしょうか?