大阪市のBRT「いまざとライナー」社会実験3年目 現時点での成果と課題は?
もともとは地下鉄今里筋線の延伸が計画されていた
もともと、長居ルートの大部分を占める地下鉄今里~湯里六丁目間では、大阪市の北東部を南北に走る地下鉄今里筋線(井高野~今里間)の延伸が計画されていました。 しかし、市の鉄道整備について協議する大阪市鉄道ネットワーク審議会で採算性などを検討したところ、実際に運行を始めたとすると、開業から40年目を迎えても赤字のままで、黒字化するには高い運賃設定や市の補助が必要になるという、非常に厳しい結果が出ました。
そこで浮上したのが、地下鉄よりも建設費などのコストが安く、道路上から簡単に乗れるBRTでした。 同審議会は、地下鉄延伸が計画されていた区間でBRTの社会実験を行い、沿線の移動需要を掘り起こすとともに地下鉄の代わりが務まるかどうかを検証するよう提言。 これを受け、市は2019年4月から社会実験を開始しました。実際の運行は、大阪メトログループに委託しています。
社会実験開始2年の利用客数の現状は?
社会実験を始めてからまもなく丸2年となる2021年2月、市は実験の現状をまとめた資料を発表しました。 それによると、平日の利用客数は、実験を始めた2019年4月で1日平均1973人(1便あたり10.4人)だったのが、同年12月には約1000人増の2960人(同15.7人)に増えました。 2020年に入ると新型コロナウイルスの影響で一旦減少しますが、同年12月には同2875人(同15.2人)と前年同月とほぼ同じ水準に回復しました。
沿線企業の通勤利用が少ないなど課題も
都市交通局の担当者は「コロナ禍の影響は地下鉄や路線バスよりも小さい。実験開始からまだ2年が経過したところであり、利用客数にはまだ伸びしろがある」と見ています。 沿線住民にアンケートを実施したところ、いまざとライナーの認知度は8割程度あり、利用客の約半数が「外出機会が増加した」と回答したとのこと。 担当者は「コロナ禍で利用客数の増減はあるものの、いまざとライナーの運行による新規需要が一定創出されている」とする一方、「沿線企業での通勤利用が少ないことや『地下鉄・BRT連絡定期券』の認知度が低いことが分かっており、沿線企業に対するさらなる需要喚起が必要」と課題も指摘します。 この社会実験は、開始から3年から5年が経過した段階で効果を検証。その上で、市では今後の対応方針を決定する予定です。本格運行への移行には採算性も問われそうですが、2月の発表資料には記載がありません。 担当者によると、採算性についても5年経過後に検証するとのことです。