開業13年目のFPが仕事で使う「危ない投資」の見分け方。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
2023年3月、世界中の金融機関に衝撃が走った。クレディ・スイスの「AT1債(エーティーワンさい)」に関するトラブルだ。 このトラブルはスイスの大手金融グループ「クレディ・スイス」の発行したAT1債と呼ばれる社債(日本円にして2.4兆円相当)が突然無価値、ゼロ円になったものだ。 この商品は日本国内でも富裕層を中心に1400億円分が販売され、そのうち950億円分を販売していた三菱UFJモルガン・スタンレー証券は顧客から約70億円もの損害賠償訴訟を起こされているという。 (三菱UFJモルガン「70億円訴訟」、投資家たちの憤り 紙くずとなった「AT1債」に納得できない理由 東洋経済オンライン 2023/12/25) 筆者はFPとして多数の相談に乗っているが資産運用も守備範囲だ。その中には投資のトラブルも含まれる。 すでにサギと判明しているものは警察と弁護士の仕事なので守備範囲外、として相談は断っているが、中には相談者本人が気付いていないだけでサギが疑われる投資もある。 投資で大損したがどうしたら良いか? せめて元に戻って欲しいのだけど……という投資相談が、よくよく話を聞くと投資サギであると判明したことは珍しくはない。 これは完全に「アウト」では? よく逮捕されないな……。 そんな話が後に事件として報じられ、予想通り金融庁から行政処分を受ける、という経験も複数ある。 「良く分からないものには投資をするな。」 多くのFPは決まり文句のようにアドバイスをするが、金融商品は複雑で売り手ですら100%理解をしていない。そもそも個人投資家は自身が何が分からないかも分かっていない。つまり良く分からないものに投資をするな、と言い始めたら銀行預金すら出来なくなってしまう。間違ってはいないがアドバイスとしては全く役に立たない。 特に冒頭で紹介したAT1債のような商品は、複雑ではあるものの、大手金融機関が富裕層限定で販売していて、世界でも有数の金融機関であるクレディ・スイスが発行している……そんな商品の危険性を事前に判断できるのか? 改めて考えるとこの案件は非常に難しいが、結論から言うとリスクを判断する糸口はある。それが「利回りが高すぎる」という部分だ。AT1債は10%近い利回りだった。 現在はiDeCoやNISAで投資が身近になったことで資産運用を行う人はケタ外れに増えた。FPとして相談をしていても、以前は資産の100%が貯金という人がほとんどだったが、今では全く投資をしていない人の方が珍しい。投資が身近になった分だけ危険な投資と安全な投資の見分け方はより重要な知識になったと言える。 そこで開業13年目の筆者がFPとして今回のトラブルを材料に、情報不足でも正しい投資判断を行う方法を解説してみたい。
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