開業13年目のFPが仕事で使う「危ない投資」の見分け方。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
■債券の投資家が株主よりも後回しにされる異常事態。
今回の投資が「ハイリスクな金融商品に投資をして損をしただけ」ということであれば巨額の損失であっても特におかしなことはない。しかしこのケースではクレディ・スイスの株主はUBSの株式が割り当てられ、損はしたものの「全損」ではなかった。一方で株主より優先されるべき劣後債(AT1債)の投資家は全損となり、本来ではあり得ない順位で損失が発生した。 企業が破綻した際に通常の手順では、残っている資産を現金化して、負債=借金や未払いの賃金、税金等が優先して支払われる。それでも残っているお金があれば株主にも分配される、というのが正しい順番だ。これは資産運用の分野では説明するまでもない常識だ。 劣後債も債券の中では優先順位は低くなるものの、株主より優先順位は高い。しかしクレディ・スイスのAT1債は極めて特殊な条件がついており、それによって株主が優先して救われる異常事態が発生した。 現在日本で裁判になっている理由は、このような特殊な条件、投資家にとって極めて不利で、なおかつ通常なら考えられない条件が販売時に説明されていなかったのではないか、ということが最大の理由だ。 そして前述の通り、株主より劣後債の投資家が後回しにされるなんて契約に書いてあるからと言ってもアリなのか?という部分でも争いがあるため、このトラブルは余計に複雑だ。 これら複雑な事情があることからAT1債による被害は「欲ボケの金持ちが騙された」といった単純な話ではないという事になる。 当然の事ながら、こういった複雑な事情はトラブルが起きた後だから大きく報じられていて、現在では「調べれば分かる」状況になっている。トラブルが起きる前に調べた所で分かるはずもない。だからこそ世界中の投資家が騙され(?)てしまい、日本円で二兆円を超す莫大な損失が発生した。 では筆者がこれらの詳しい情報なしにリスクを把握できたか?と考えると、唯一の手掛かりが10%近くと報じられている利回りの高さだ。
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