開業13年目のFPが仕事で使う「危ない投資」の見分け方。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
■リスクは利回りから分かる。
たびたび報じられる投資サギではその多くが非現実的な利回り・リターンを約束している。 例えば毎月3%のリターンが得られる事業への投資とか、10%の利息がつく元本保証の金融商品といったケースだ。 筆者はそんな投資サギで多数の被害者、多額の被害が発生したというニュースを見るたびに「相談に来てくれれば5秒でサギと分かるのに!」とXに書き込んではイライラしている。 月3%、単純合計で年間36%も投資家に報酬を約束するには、その事業のリターンが「投じたお金に対して36%以上」でなければ成り立たない(売上に対する利益率ではないので注意)。つまり、そんな優良な事業が世の中にどれだけあるのか?ということだ。そして仮にあるとしてもそんな優良事業が資金調達に困るはずもなく、経営者と親友でもない個人投資家に投資のチャンスが回ってくることは絶対にない。 つまりは詳しく調べるまでもなく、過剰に高い利回りからハイリスクを通り越してただのサギであると一瞬で分かる、という説明になる。
■元本保証はサギの目印。
元本保証で10%に至っては冗談のレベルだ。そもそも元本保証をうたう事が出来るのは銀行預金などごく一部に限られる。それ以外の金融商品で元本保証を約束すれば出資法違反で違法行為となる。 運用側、お金を預かる立場から考えると、元本保証で10%の利回りを投資家に約束するには、ローリスクで10%以上の利益を得る必要がある。ハイリスクな運用をすれば利息どころか元本を失う可能性があるからだ。 銀行は利回りが1%にも満たないローリスク・ローリターンの国債を大量に買っている。なぜなら顧客から預かった預金を必ず返さないといけないからだ。住宅ローンや企業への融資を厳密に審査を行う理由も全く同じだ。そして顧客から預かった預金のコスト、預金金利と、貸出金利の差が銀行の利益となる。これを利ざやと呼ぶ。 預け入れの期間や金額にもよるが、現在ならば定期預金は高くて0.3~0.4%程度、この金利で預金を集めて、1~3%程度で企業に貸し出してその差額、利ざやで利益を出す。 当然、貸し出し金利も期間や企業の財務状況で変化するが、この数字を見ても極めて薄い利幅で有ることは分かるだろう。 一般的なお金の貸し借りがこのような水準でやり取りされている以上、元本保証で10%の利回りという投資機会が日本国内であるはずもなく、結局は法的にも投資環境的にもサギであると一瞬で分かるという説明になる。 それでは10%近くと言われているクレディ・スイスのAT1債はどうか?
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