最悪の原発事故から11年、廃炉を担う若手技術者たちの苦闘 #知り続ける
東電の木部はもともと福島とは関わりがなかったが、福島で働くようになり、地域の人と接するうちに思うところも出てきたという。 「福島で働くことになって、やはり地元の方たちとも交流を持ちたいと思いました。趣味などを通じて仲良くなると、『東京電力も大変だね』と言ってもらうこともあります。でも、決してそれだけではなく、東電に対してはいろんな思いがあるはずです。個人的にも(東電が)迷惑をかけてしまった事実は消えないと思っています。それに対して自分ができることは、目の前の仕事を愚直にこなすことだと思って日々取り組んでいます」
昨年3月、東京電力は廃炉の中長期実行プランを見直した。使用済み核燃料の取り出しは2号機が2024~2026年度での開始、1号機が2027~2028年度での開始で、ともに2031年内に完了させる計画だ。燃料デブリは今年中に2号機で試験的な取り出しが始まる予定となっている。 燃料デブリの取り出しが完了するのはいつなのか。計画は10年後の2032年末までで一旦、区切られているが、「記載内容には変更がありうる」と注記されている。完了までに何年かかるのかはまったくの未知数だ。今後、廃炉はどこまで進められるのか。その進捗は、彼ら技術者の取り組みにかかっている。
------ 小川匡則(おがわ・まさのり) ジャーナリスト。1984年、東京都生まれ。講談社「週刊現代」記者。北海道大学農学部卒、同大学院農学院修了。政治、経済、社会問題などを中心に取材している。https://ogawa-masanori.com