最悪の原発事故から11年、廃炉を担う若手技術者たちの苦闘 #知り続ける
しかし、1号機はいまだ天井がなく、このままがれきを撤去すると、がれきに付着した大量の放射性物質を飛散させてしまう。そこで原子炉建屋を覆うカバーを設置し、飛散のリスクを低減させるのだ。 ただ、ここでも放射線量の高さが作業を困難にしていると木部は言う。 「1号機には放射線量が高い場所があるため、作業によっては一日の時間が限られます。また、遠隔で工事をしたり、作業時間を少なく効率的にしたりと、さまざまな工夫が必要です。そこが通常の建設とは大きく異なります」
1号機の大型カバー設置は2023年度頃の完了を目指している。そこからがれきを撤去し、2027~2028年度に使用済み核燃料の取り出しを開始する予定だ。 一方、部署によってはまったく先が見通せない人もいる。前出の園田と同じ東芝エネルギーシステムズで働く玉井和樹(33)は、4年近くかけた調査が中断された苦い経験がある。
4年かけたプロジェクトが中断
玉井は2015年8月から「燃料デブリ取り出し」を担当するグループに所属している。主な任務は圧力容器内の燃料デブリの状況を調査することだ。そのためには、「どういう方法で調査するのか」を決め、「そのために必要な装置を開発する」ことが求められる。
燃料デブリは1~3号機に存在するが、建屋上部などの放射線量は高いため、遠隔でできる調査方法を構築する必要があった。 2012年1月に東芝の別のチームが格納容器に穴を開けてカメラを入れる調査を行ったのを皮切りに、原子炉内部の多様な調査が行われることになった。玉井も「どこから」「どうやって」穴を開けるのかという検討から始めた。 「検討を重ねた結果、格納容器の上から数百メガパスカルという超強力な水圧で穴を開けるウォータージェットという方法にたどり着きました。これだと装置を支える力が小さくて済むし、十数メートルもある炉心部までも届くと考えました」 格納容器の上に開けた穴から燃料デブリのある炉心部までの通路を確保し、カメラと線量計を通して内部の状態を調査するという計画だった。