八重山語・スマムニで「赤鼻のトナカイ」は<アカーアカヌ パナヌ ピビジャーさんヤ>…歌って残す島言葉
世界で話される言語・方言のうち、約2500が消滅の危機に直面している。沖縄県各地で使われてきた「しまくとぅば」(島言葉)もその一つ。「言葉は、文化や風習、伝統の基。言葉がなくなれば、それらも失われてしまう」。東大浜剛さん(62)は、生まれ育った石垣島や西表島など八重山地域で紡がれた「八重山語」の中でも、古里で話される言葉「スマムニ」を残そうと奮闘する。 【図表】消滅危機にある「しまくとぅば」
<アカーアカヌ パナヌ ピビジャーさんヤ(真っ赤なお鼻のヤギさんは)>
昨年12月10日、石垣小(石垣市)で、子どもたちの歌声が響いた。クリスマスソング「赤鼻のトナカイ」を東大浜さんが訳した。「石垣島にトナカイはいないので、ヤギ(ピビジャー)に変えました」と東大浜さんが話すと、子どもたちは笑顔になった。
この日に開かれたスマムニ講座には、1~6年の約30人が参加。表に動物などの絵、裏にスマムニが書かれたカードを取り合うゲームも楽しんだ。6年の平良百花さん(12)は「聞くことがあまりないので難しかった。覚えた言葉をクイズにして家族に出したい」と声を弾ませた。
しまくとぅばは、沖縄語、八重山語、与那国語など五つに大別される。国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)は、消滅の危機にある言語について、危険度を「絶滅」「極めて深刻」「重大な危機」「危険」「脆弱」「安全」の6段階とする。八重山語と与那国語を「重大」、残りを「危険」と判定した。
東大浜さんの両親はスマムニを話し、父は縁側で三線を手に民謡を歌い、母も歌や踊りが得意だった。
大学進学で上京。約20年間石垣島を離れ、東京や宮古島で学習塾を経営するなどした。帰省で民謡を耳にすると、自然と体が動く。そんなときに実感した。「ここが古里なんだ」
子どもの誕生を機に、2000年に石垣島に戻った。再び島の言葉が身近にある日々。しかし13年に母が亡くなり、両親を失うと、スマムニで話す機会もなくなった。