関西国際空港はなぜ「ロストバゲージ」がゼロなのか? 世界一の工夫を訊いた
◆ 丁寧な心がけ「雨で濡れてしまった荷物は…」
──なるほど。2023年の関西国際空港の航空機発着数は16万9773回と発表されていますから、荷物の数は膨大です。紛失が考えられる箇所ではどのような工夫をされているのですか? 「CKTS」では、手荷物がお客さまの手元に渡るまで、ベビーカーやゲート預け・優先順位・トランジット情報などをもとに、複数人で漏れがないように個数・目的地の確認をおこなっています。 もしも個数が合わない場合は、航空機の貨物室内、航空機の駐機場所から荷捌き場までの道中を捜索するほか、コンテナやカート内に残っていないかをすぐにチェックして対応します。 また、到着手荷物をターンテーブルに流す際も、関西国際空港が最終目的地であることや、乗り継ぎの手荷物が混載されていないかをひとつひとつ確認します。到着ターンテーブルのカーブ周辺に手荷物が落ちていないかもチェックします。 でも一番の心がけは、「お客さまの手荷物を大切に取り扱う」という意識です。 ──確認作業の積み重ねがロストバゲージ・ゼロを実現しているのですね。見ていると、荷物の上げ下ろしなども丁寧にされているようです。 お客さまの荷物を丁寧に取り扱うことはもちろん、「持ち手をお客さまの方向に向ける」「長尺荷物やベビーカーは手渡しする」「雨天時には、雨で濡れてしまった荷物はタオルで拭き取りをする」等をおこなうようにしております。 ──そんなことまで! そういったことは、日本ならではの対応なのでしょうか。 もちろん日本だけではないと思いますが、日々心掛けているのは空港ご利用のお客さまに快適に過ごしていただきたい、そして関西国際空港をまた利用していただきたいというホスピタリティ精神と細やかな気配りの現れではないかと考えております。 ◇◇ 同空港は、イギリスを拠点とする世界の航空・空港の格付け会社「スカイトラックス」の国際空港評価のうち、手荷物取扱部門において2024年に8回目の1位を受賞しました。評価には、手荷物受け取りまでの待ち時間や効率、ロストバゲージの対応などが含まれます。 「スカイトラックスの受賞やロストバゲージ・ゼロの記録は、各航空会社、各ハンドリング会社をはじめとする、関係者の日々の努力の積み重ねと丁寧な作業の賜物だと思います。これからも空港を利用されるお客さまが快適で楽しい時間を過ごせるように努めて参ります」と広報担当者は話しています。 これからは見えないところで地道な作業を重ねるスタッフの存在を感じながら、レーンの荷物を受け取りたいですね。 取材・文/太田浩子