さらば昭和の体育館 ジャパネット・三井不、娯楽×スタジアムで稼ぐ
JR長崎駅から徒歩約10分の好立地に「夢の国」が誕生する。「ディズニーランドのように、皆が楽しく過ごせる場所にする」。そう意気込むのは、ジャパネットホールディングス(HD)の髙田旭人社長兼最高経営責任者(CEO)だ。髙田氏が整備を主導した大型複合施設「長崎スタジアムシティ」(長崎市)がいよいよ10月14日、グランドオープンする。 【関連画像】新球場への移転で集客力が高まった。広島東洋カープの本拠地での観客動員数 ジャパネットHD傘下のJリーグチーム「V・ファーレン長崎」とBリーグチーム「長崎ヴェルカ」の本拠地となるスタジアムとアリーナが複合施設の中核だ。この2つのスポーツ施設を集客マシンに位置づけ、併設するショッピングモールやホテル、オフィスビルの利用につなげる。 ●欧米のスポーツ施設がお手本 総工費は約1000億円で、ジャパネットグループが自己資金と借り入れで賄った。複合施設全体で年間130億円の売り上げを目標にしており、利益を出しながら25年から30年かけて投資を回収する計画だ。スポーツ施設単体で見た場合でも、約35年間で投資を回収できると見込む。 髙田氏は欧米の先行事例を参考に、スポーツ施設の娯楽設備を徹底的に充実させた。例えばスタジアムの上空に渡したケーブルは、来場者がぶら下がりながら滑空できる「ジップライン」と呼ばれるアトラクションだ。スタジアム内にはテーブルでゆっくり食事しながら観戦できるテラスや、企業向けに年間契約のVIPルームも用意した。試合の迫力を思う存分味わいたい観客向けにはピッチの間近で観戦できるプレミアム席を設けた。 Jリーグの試合がない日はスタジアムを開放し、コンコースに並ぶ売店で食事を買ったり、観客席で休憩したり、ピッチで子どもを遊ばせたりできる。夜はプロジェクションマッピングとレーザーを用いた光のショーを開催するなど、あの手この手で日常的に人々が集まるスタジアムに仕立てる。 アリーナも同様だ。Bリーグの試合がない日も人々が楽しめるよう、練習風景を見学できるようにしたり、アイスショーやコンサートを開ける設備を整えたりした。髙田氏は「娯楽施設の少ない長崎を面白くする。勝算は十分にある」と自信を見せる。スポーツ施設に併設するホテルやショッピングセンターなどにとどまらず、町全体の活性化を見据えている。 ●東京ドームも地味だった 娯楽性を追求した欧米流のスポーツ施設が日本で増え始めたのは2000年代半ばからだ。それまではひたすら試合を観戦することに特化した、地味なスポーツ施設だらけだった。人気の読売巨人軍や阪神タイガースの主催試合が開かれる東京ドーム(東京・文京)や甲子園球場(兵庫県西宮市)ですら、欧米の基準からすれば娯楽色はないに等しかった。 しかし東北楽天ゴールデンイーグルスが05年から宮城球場(仙台市)を本拠地に利用し始めるのに合わせて、VIPルームやフィールドに迫る座席、飲食店などの増設に着手した。この頃から、プロ野球チームの運営会社やその親会社が主導する形で、本拠地を改修したり、新築したりして、娯楽設備の充実したスタジアムが徐々に増え始めた。