さらば昭和の体育館 ジャパネット・三井不、娯楽×スタジアムで稼ぐ
その効果は大きい。広島東洋カープは09年に本拠地を旧広島市民球場(広島市中区)から新広島市民球場(マツダスタジアム、広島市南区)に移すと、100万人前後で推移していた年間の観客動員数が200万人を超えるようになった。バーベキューを楽しみながら観戦できるテラスなど、バラエティー豊かな娯楽設備を整えたことが功を奏した。 プロ野球のスタジアムで娯楽設備への投資が進んだのは、ほかのプロスポーツに比べて試合数が多いからだ。本拠地での主催試合は年間約70試合も開催され、入場料収入や広告料収入などで投資を回収しやすい。 ●建設ラッシュに沸くBリーグ プロ野球に続いて娯楽設備への投資が進んだのが、16年に開幕したBリーグである。本拠地のアリーナで開かれる主催試合は年間約30試合とプロ野球と比べて少ないものの、屋根で覆われた閉鎖空間のため天候に左右されにくく、音も漏れにくい。試合のない日にはコンサートを開くなどして、バスケットボール以外の収入源を確保しやすい構造になっている。 アリーナ経営はもうかるとの認識が広がっており、現在、Bリーグではアリーナの建設ラッシュに沸く。24年5月には「千葉ジェッツふなばし」を傘下に持つMIXIがJR南船橋駅(千葉県船橋市)近くに1万人規模のアリーナをオープンさせた。「川崎ブレイブサンダース」を傘下に持つディー・エヌ・エー(DeNA)は28年10月、川崎市中心部に1万5000人収容のアリーナを開業する予定だ。 プロ野球やBリーグに比べて収益化が難しいとされるのがJリーグのスタジアムだ。本拠地での主催試合は年間17試合と少ない。その上、Jリーグの旧規定や選手らの要望に従って、ピッチに天然芝を用いるスタジアムがほとんどだ。ピッチでコンサートや展示会を開催すると芝が傷むため、サッカー以外のイベントに使用するのは容易ではない。 ジャパネットグループは10月にオープンするスタジアムでこの難題に挑む。髙田氏は「私たちがほぼ民間の力だけでサッカースタジアムの経営を成り立たせたら、10年後には全国10カ所ぐらいに同じような施設ができているかもしれない。スポーツを通じて日本を元気にするためにも、絶対に黒字化しなければ」と決意を固める。 ジャパネットグループは今回、公的支援にあまり頼らない形でスタジアムとアリーナの経営に乗り出す。一方で全国的には民間のスポーツ施設経営に対する公的支援が活発になっており、その恩恵を受ける企業が増えている。 ●日ハムの誘致効果、523億円 近年、最も注目を集めた公的支援は、北海道北広島市による北海道日本ハムファイターズに対する支援だろう。札幌ドーム(札幌市)からの本拠地移転を模索していた日ハムに対して、北広島市は土地の無償貸与、固定資産税・都市計画税の10年間免除など手厚い支援を約束し、誘致に成功した。 日ハム側は北広島市に新スタジアムを建設し、23年から使用している。新たな本拠地は新規に整備された大型複合施設「北海道ボールパークFビレッジ」の中核に位置づけられ、ホテルや居住施設などが併設された。 Fビレッジの効果により、北広島市への来訪者が年間350万人増え、年間523億円の経済効果が生まれると三菱UFJリサーチ&コンサルティングは試算する。北広島市にとっては、公的支援を差し引いても余りある恩恵を手にする。 このほか、公共スポーツ施設の改修や運営を民間に任せる自治体が全国で増えている。 毎年開かれてきた国体や、02年のサッカーワールドカップ(W杯)日韓大会などに合わせて整備した公共スポーツ施設の維持に毎年億単位の公費を投じている自治体が全国に多数存在する。日本経済の低迷で地方財政に余裕がなくなり、多くの自治体がそうした施設の改修や運営を、コスト意識の高い民間企業に委託するようになった。