「呼吸」を変えるメリットと方法【生理前の不調や睡眠の質も改善する!】
鼻呼吸
これまでの研究により、運動中は、その強度を問わず、口より鼻で息をしたほうが酸素の使用量が少ないことが分かっている。酸素の使用量が少ないということは、少ない酸素で同じだけの運動ができるということ。人間にとっての酸素は車にとってのガソリンのようなもの。車の場合、1kmを走るために必要なガソリンの量が少なければ少ないほど“燃費が良い”ということになる。人間の場合も同じで、1kmを走るために必要な酸素の量が少なければ少ないほど燃費が良くなる。言い換えれば、走る距離を伸ばしても、それほどすぐにへばらないということだ。 それだけではない。鼻呼吸は酸素の取り込みと循環を促進し、顔の筋肉と骨の正常な発育を助けるだけでなく、免疫システムをサポートし、肺活量を改善し、睡眠の質の向上させることも分かっている。 「口にテープを貼って寝るようになってから、睡眠の質が著しく改善しました。眠りが深くなりましたし、体が潤い、リフレッシュした状態で目が覚めるようになりました」とクライン氏。「日常生活のストレスに対処するのは大変ですが、寝不足のときは一段と大変です。ひと晩じゅう鼻呼吸をするだけで、ストレスに対処する能力も大幅に改善しました。私の勧めで睡眠時の鼻呼吸を始めた人には、一貫して同じ変化が見られます。私の夫のイビキには特に効果がありました。乾燥肌や皮膚炎が大きく改善することもあります」 クライン氏の話では、運動中に鼻呼吸をすると呼吸のリズムが安定し、フロー状態に入りやすくなる。この状態なら、ランニングもフラフラではなく次回が楽しみに思えるほど良い気分で終えられる。 「慣れるのに1~2カ月かかりましたが、鼻呼吸が当たり前になってからは持久力が大幅に向上し、何より体を動かすのが本当に楽しくなりました。口を開けて走っていたときは呼吸のリズムがバラバラで、ちょっとストレスを感じていました」 そして、忘れてはならないのが不安と乱れた呼吸の関係性。このトピックは長年議論されているので、クライン氏は自分の患者に対しても鼻呼吸の重要性を強調している。 「心理療法の患者さんには、カウンセリングフォームの中で鼻呼吸か口呼吸かを聞いています。それだけで患者さんの心理状態がある程度分かりますから。不安を軽減するために心理療法を受けている患者さんは、鼻呼吸にシフトするだけで大きな変化を感じます」とクライン氏。「これにはいくつかの理由があります。まず1つ目に、(鼻呼吸にシフトしたことで)吸い込む空気の量が減ると、血中で重要な化学的変化が起こります。逆に口呼吸では、胸の上部で呼吸をすることになるため、体内のストレス反応が強くなります。2つ目に、鼻呼吸をしていると自分自身に意識が向くようになり、自分自身に意識が向くと好奇心が湧いてきます。そして、この好奇心はポジティブな変化を起こすための鍵になります」 フィットネス&ウェルビーイングの専門家であるメーガン・ウォーターズ氏が自分の呼吸を意識するようになったのは、ジェームズ・ネスター著の『BREATH:呼吸の科学』を読んでから。ウォーターズ氏は、科学的に実証された鼻呼吸の健康効果を知れば知るほど、自分自身の呼吸パターンを意識するようになったそう。 「鼻呼吸しかしないようにしてからは睡眠の質が明らかに改善しましたし、浅くて鋭い呼吸をしていたときよりハードなトレーニングができるようになりました。口呼吸がストレスと不安を増幅させ、睡眠の質を低下させるだけでなく、喉の炎症や口臭のリスクも高めることは、多くの論文が明らかにしています」 ナイキのトレーナーを務めるウォーターズ氏は、自分の呼吸を見直す中でマウステーピングも取り入れた。 「マウステーピングをして寝るようになってからの6カ月で、起きたときの活力レベルが明らかに変わりましたし、朝の口臭も完全に消えました。私がメルボルンで共同所有している高地トレーニングジムAir Locker Training Brunswickのメンバーも、トレーニング中は意識的に鼻呼吸と散々言われてうんざりしていると思いますが、これには正当な理由があります。鼻呼吸をすると、使用中の筋肉に送られる酸素量が増えるのでリカバリーが早くなるだけでなく、神経系のバランスも保ちやすくなります」