「呼吸」を変えるメリットと方法【生理前の不調や睡眠の質も改善する!】
私たちは1分で約14回、1日で約2万回、一生で約5億2600万回も息をするので、いまさら呼吸の仕方を教わる必要はないかもしれない。でも、意識的に息を吸って吐く練習、つまり“ブレスワーク”のおかげでパフォーマンスが向上したと言う一流のアスリートは少なくない。 【写真】心をスッと落ち着かせる「3種類の呼吸法」 なぜなら、臨床心理士のレイチェル・L・ゴールドマン博士によると、私たちの呼吸の仕方は、不安やストレスのレベルに関係する心拍数、血圧、神経系に影響を与えるから。 少し前までヨギにしか知られていなかったブレスワークは、いまや栄養管理と睡眠に並ぶフィットネスの3大支柱。そこで今回は、健康と運動パフォーマンスの向上を目的としたブレスワークの実践方法を理解するべく、ナイキのアンバサダーでフィットネス専門家のメーガン・ウォーターズ氏とゾーイ・クライン氏に話を聞いた。今回はこの内容をオーストラリア版ウィメンズヘルスからご紹介。
ブレスワークと女性の体
呼吸の方法を変えると、酸素の取り込み・運搬効率が高くなり、体内を循環する酸素の量が増えるため、筋肉が疲れにくくなる。鼻呼吸や低酸素トレーニングは何十年も前から行われているけれど、近年は特に女性の間で関心が高まっている。なぜだろう? 「女性の体を理解したことで、健康とウェルビーイングに対する私のアプローチは完全に変わりました」と話すのは、Nike Well Collective(ナイキ・ウェル・コレクティブ)ヨガインストラクターのクライン氏。「ブレスワークの研究、トレーニングと実体験を通して、呼吸はジェンダーによって大きく異なることが分かったのです」 「女性の月経周期は、私たちが意識的あるいは無意識的に呼吸する方法と相互に作用しています。私たちの自然な呼吸数は、月経周期のステージによって変化する傾向にあります。プロゲステロンは呼吸を促進することで知られており、呼吸数の変化にも関係している可能性があります。実際に、黄体期を通してプロゲステロンが増減すると、女性は過呼吸になりやすくなります。食べすぎと同様、過呼吸も体の負担になります。また、ホルモンの影響で、女性は男性の約2倍、呼吸パターン障害になりやすいと言われています」 クライン氏は、この情報をブレスワークの練習に取り入れて、黄体期で過呼吸になる可能性を下げている。クライン氏のブレスワークは1分あたりの呼吸数を少しずつ減らす練習。意外かもしれないけれど、呼吸数を減らすことで活力と集中力が高くなり、リカバリーが早くなる。 「私たちの活力、モチベーション、集中力は月経周期のステージによって変化する傾向にありますが、ブレスワークは自律神経系を止めたり加速させたりするための手段なので、私は月経周期のステージに応じてブレスワークの内容を変えています。通常は直感的に変えることが多いですね」とクライン氏。「ブレスワークはエネルギーを賢く消費するためのテクニック。必死にではなく、賢くです」 「卵胞期(月経と排卵を含む)の私は通常かなり元気なので、体に適度なストレスを与えながら、ストレスに適応する能力を意図的に高めていく“ホルメティック・ストレス”(ホルミシス効果)のブレスワーク(深くて速い呼吸など)をしています。卵胞期では、こういう少しハードなブレスワークをするだけのエネルギーと余裕があるんですよね。でも、黄体期は少し敏感になり、省エネモードに入る傾向があるので、穏やかなブレスワークで一息ひと息を長くする練習をしています。意図的なブレスワークを始めてからは、月経前症候群(PMS)の症状が管理しやすくなり、自分のケアが上手くできるようになりました」