F1参戦2戦目を検証…なぜ角田裕毅はミスを連発させたのか?
その言葉通り、角田はインターミディエイト(雨用と晴れ用の中間)タイヤを履いてスタートしたレース前半は慎重な走りに徹していた。ところがレースは路面が乾き出した中盤に他車同士のクラッシュによって赤旗中断に。このとき、角田は10番手までポジションを回復していた。前を走るのは現役最強のルイス・ハミルトン(メルセデス)。冷静だった角田の闘志に火がついても不思議はなかった。 果たして、再スタート直後の最初のブレーキングで角田はハミルトンにオーバーテイクを仕掛ける。しかし、「ハミルトンを抜かしたと思ってアクセルを踏んだら、もう全然後ろ(リアタイヤ)のグリップがなかった」という角田はスピン。グラベル(砂利)にはまり、大きく後退した。 「ウエットパッチ(部分的に濡れた路面)に乗ったんだと思います」とスピンした原因を語った角田。再スタート時、走行ラインは乾いていたが、それ以外はまだ完全には乾いていなかった。乾いた走行ライン上を走っていたハミルトンを抜くために角田は乾いた走行ラインを外し、乾き切っていない路面に足をすくわれたわけだ。 こうした技術的なミスだけでなく、このハミルトンへのオーバーテイクは戦略的にもミスがあったように思う。全車ドライタイヤで再スタート後のハミルトンのペースは、9番手から2位までポジションを上げたように、優勝したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)をもしのぐものがあった。つまり、再スタート直後のオーバーテイクが成功していたとしても、角田は再び抜き返されていた可能性が高い。だとしたら、角田がリスクを犯してハミルトンをオーバーテイクする必要はなかった。 F2時代からレースを俯瞰して見ることができる冷静な角田にしては、珍しく目の前の敵を追いすぎて犯したミスだった。 雪辱を期す第3戦は30日からのポルトガルGPである。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)