なぜ元世界王者の具志堅氏はジム閉鎖を決断したのか…選手、スタッフは予期せぬ通告にパニック
ボクシングの元WBA世界ライトフライ級王者で13度の世界王座連続防衛の日本記録を持つ具志堅用高氏(64)が会長を務める白井・具志堅スポーツジムは6日、7月末でジムを閉鎖すると公式ホームページで発表した。具志堅氏は同日、全所属選手とスタッフをジムに集めてジムの閉鎖と今後の移籍先探しに協力することを報告した。同ジムは1995年に日本人世界王者第1号である元世界フライ級王者の白井義男氏と共同で設立。白井氏が名誉会長、具志堅氏が会長を務め、2017年5月には、比嘉大吾(24)がWBC世界フライ級王座を獲得したが、その後、計量失格の問題が起きて無期限資格停止処分となり、この3月に再起したばかりの比嘉がジムを離れた。新型コロナウイルス禍がジム経営も直撃。長年の相棒だった元WBC世界ライトフライ級王者の友利正氏(60)のトレーナー契約が解除されるなどのゴタゴタが続いていた。具志堅会長は、タレント業との兼務で会長業に集中できず25年の歴史に幕を下ろすことになった。
弁護士同席で具志堅氏が報告
午後6時。東京杉並区にある白井・具志堅ジムに所属する全選手とスタッフが集められていた。なぜか弁護士をその場に同席させた会長の具志堅氏は、自ら「7月末を持って具志堅ジムは終わりにします。ハイ!」と興奮気味に大きな声でジムの閉鎖を報告した。ほとんどの選手、スタッフは、集められた理由が、ジムの閉鎖の報告で、しかも、それが7月末と急であることを考えもしていなかったため、ショックのあまり、パニックにも似た動揺が広がったという。 ホームぺージ上でもジム閉鎖の理由として「気力・体力ともにこれまでのように情熱を持って選手の指導にあたるには難しい年齢になったこともあり、ここが潮時と決断致しました」と説明されているが、具志堅氏は、この場でも「世界チャンピオンを作るには5年以上かかるから、もうジムを続けることは厳しい」と伝えたという。 ジムには、全日本フェザー級新人王で元日本スーパフェザーユース王者の木村吉光や元WBA世界ライトフライ級王者、山口圭司の長男、山口臣馬らが所属、7月30日からスタート予定の新人王予選にエントリーしている選手が4人もいるため、残された選手には、「移籍先に関しては、弁護士の先生も手伝うし、俺が責任を持つから心配しないで欲しい。来週もう一度話し合おう」と約束した。 「移籍に関して何か質問のある人は?」 そう問われたが、弁護士が、同席している重々しい空気と、あまりのショックで誰も口を開くことはできず、25年の歴史あるジムの閉鎖を伝えるセレモニーは、わずか15分ほどの、あっけないほど短い時間で終わったという。 実は、5月中旬にも具志堅氏が全選手、スタッフを集めたことがあった。具志堅氏と同じく沖縄出身でスタート時からトレーナーとして支えた友利氏が、新型コロナによる営業休止の影響もあり、4月上旬に契約を解除され、それを週刊誌に書かれることが判明。広がる動揺と不安を考えての措置だったが、そこで具志堅氏は、「動揺しないで欲しい。これからは俺がチーフトレーナーをする。新チーム結成してやっていく。この2、3年でチャンピオンを作る」と宣言したという。 ほとんどの選手が具志堅氏に憧れてジムに入門してきているため、その言葉に安心したが、「ジムは続くんですか」の質問が飛んだ際、女性マネージャーからは、「コロナが長引けば、もしかしたらジムを閉めることになるのかもしれない」との一言もあったという。 それでも選手や、スタッフは、何年か先の話だろうと捉えていたようだった。 ジムは、休業要請が解除された6月1日に営業が再開したばかりだったが、具志堅氏がチーフトレーナーとして動きだすことなかった。