孤独と熱意が人間性を育む――米津玄師が宮﨑駿から受け取ったもの
師と仰ぐ人物との邂逅(かいこう)を果たしたが、日常は変わりなく続く。昼間はほぼ外出をせず、カーテンを閉め切った暗い部屋で、スタンドライトの光で制作作業をするのが日課だ。 「子どもの頃から孤独感みたいなものは人より大きかったと思うし、なんでこういうふうになってしまったんだろうということを、ずっと考えている人間ではあったんですね。孤独というものとずっとつき合いながら生きてきた実感があって、だからこそものを作る人間になったんだと思うし、ものを作るにあたっての熱意みたいなものが、生まれてきたんだろうなとも思うんです」 「遊ぶというと酒を飲みに行くぐらいなんですけど、そうすると、自分を救ってくれる誰かを求めてる人たちが結構いることに気づくんですよ。そういう人間を探して、夜の街をうろうろと飲み歩くんだけど、そんなところを探しても見つかるわけがないですよね。人間性を育むために必要なものは、孤独と熱意であるから、誰かを探したところであなたが魅力的になるわけではないし、魅力的な人間でないなら人も集まってこない。孤独を持っていないから。そういうことを考えたりもするんです、最近。創作に限らず、あらゆる人間において、いかに孤独が大事かを今一度問い直してみるべきなんじゃないかと思います」 「インターネットでいついかなる時も人とつながることができるというのは、いろんな人の心を慰めているとは思うんですけど、いついかなる時も人と一緒にいて、傷をなめ合ったところで、瞬間的な痛み止めにしかならない。根本にあるものを自分で捉えるためには、一人で考えてみることを経由しないと何も始まらないと思います」
「船の中の猫」であり続ける
「これから何を?」と気の早い質問をした。 「全然何も考えてないです。しばらくは目の前にある課題を一つ一つ片づけていく時間になるんじゃないでしょうか」 「地味な勉強をしたいというか。『寄生獣』という漫画の、ラストシーンがすごい好きで。新一という男の子が、自分の右腕に寄生しているミギーという化け物みたいなやつと、ツーマンセルで戦い続けるんです。で、ミギーが、最後の最後に、新一、俺はもう眠るわって。地球に来てからいろんな情報をむさぼるように得ていって、自分の中にインプットしてきた。それを自分の中で反芻するために、外界からの刺激をシャットアウトする。眠りから覚めるのは明日かもしれないし、数十年後かもしれない。でも今はそうするべきだという気がする、みたいな話をするんです。俺も今、そんな感じです」