「認知症の症状ばかり見て、母自身を見ていなかったことに反省した」。認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父と暮らす、にしおかすみこさんの“2年目”
「なんか疲れる」をどう表現するかは人それぞれ
――にしおかさんの本では「介護」という言葉をほとんど使っていないですが、介護という言葉を使わないことに理由があったりしますか? にしおか:母は認知症ですが今のところ、どこかに行って迷子になるわけでもなく、寝たきりの状況でもないです。寄り添うご家族の中にはもっと大変な方々がたくさんいらっしゃいます。なので「介護」という言葉を使うのはおこがましい気がしてしまって。私は一人暮らしをやめて実家に戻ったのですが、母姉父の三人分の家事が増えたことで、それが上手くこなせずにバタバタしてるだけなのかなあ。それにしては「なんか疲れる」なあといった感じです。 ――「介護」と言うことで、プレッシャーや責任を重く感じてしまうというか……。 にしおか:そんなふうに考えたことはないです。元々、何も背負う気はないです。自分の元気と幸せが一番だと私は思っているので、できることしかやらないです。ただ、私のように「なんか疲れる」「しんどい」と思っている段階の方々もたくさんいると思うんです。 「介護」と名前を付けることで楽になる人もいれば、逆に名前を付けない方が楽な人もいるかもですよね。それは人それぞれでいいのかなって。言葉選びも自分が少しでも気が楽に、元気でいられるほうを選択したらいいと思います。
「くそー!」と思いながら過ごした一人旅
――『ポンコツ一家2年目』の中では、一人旅に行かれたことも書かれていますね。 にしおか:はい、小っちゃい家出ですね(笑)。長野の諏訪湖に行ってきました。一旦、家族のことを全部忘れてと思って行ったんですが、やっぱり完全に忘れるというのは難しかったです。息抜きしては、家族間のゴタゴタを思い出し、「くそー!」となりながらの一泊二日でした。それでも気分転換はできました。しょっちゅう旅行に行って息抜きしたいところですが、そんなお金も貯金もないので、現実には難しいですね。 ――にしおかさんは、普段の気晴らしとか、疲れたときの解消法ってありますか? にしおか:マニアックな趣味ですが、野菜やフルーツを彫ったりして、お花や龍を作ったりするベジタブルカービングを時々やります。これをしている時間は無心になります。他には都内のお洒落なカフェのテラス席に座ってコーヒーを飲みます。なんだかイケている女性な気がしてきます(笑)。でも夜、息抜きしたいとき、お店は閉まっているし逃げ場がないんですよねえ。 父と母は夜に夫婦喧嘩することが多いんです。仲裁しても無駄だということは嫌というほど経験済みです。とにかく自室でイヤホンをして、焚き火や雨等のヒーリング系音楽を聴きながら、そのまま寝られたら寝ちゃいます。歌詞がある音楽を聴くと“歌詞に疲れちゃう”ので。もっといい方法ないですかねえ(笑)。