酔いつぶれた女性検察官を自宅に連れ込み…「関西司法のエース」検事正の性暴力の罪深さ
「表沙汰にすれば、私は自死するしかない」
2019年に検察を辞めることを決めた北川被告に対し、女性は犯行の認識や理由を質し、書面で回答するよう求めると、「この被害を表沙汰にすれば、私は自死するしかない。大阪地検検事正による大スキャンダルとして組織は強烈な批判を受け、検事総長以下辞職に追い込まれ、大阪地検は組織としてたち行かなくなる」という内容の回答を送ってきている。 「今回の事件は、犯罪そのものに加え、この口止めが非常に悪質です。検察官はそれぞれが独立して職権を行使するものの、検察には検事総長を頂点とした指揮命令系統の中で職務を遂行するという検察一体の原則があります。絶対的な上下関係がある組織なのです。そうした組織で上司を訴えることは検察という組織にいられなくなる、検事を続けられなくなることを意味します。 だから彼女は何度も被害を訴えることを逡巡したんだと思います。逆に北川被告からすれば、彼女が検事という仕事に生き甲斐を持って取り組んでいたのを知っていたからこそ、検事という仕事を失ってまで自分を突き出すことはないと考えていたんでしょう」 北川被告は定年まで3年を残して2019年11月に辞職したことに対して、法曹界では訝しむ声もあった。だが退職金までもらい、盛大な退官パーティーを開き、退官後は企業法務などを担当する弁護士として活動していた。夜な夜な検察の現職職員と飲み歩き、検察に大きな影響力を持ち続けていたという。
検事正であった人間が…
こうした被告に対して、被害女性は会見でこう話した。 「自分の犯した罪などなかったかのように、被害者の存在など忘れてしまったかのような振る舞いで被害感情を逆撫でし、必死に苦しみに蓋をし、仕事に没頭し、そうやってなんとか生きていこうとしていた私を踏みにじってきました。検事正であった人間がこれほど罪深く不道徳で、非常識であることに誰も気づいていない。処罰されるべき人が処罰されていない」 女性は怒りや悔しさでPTSDの症状が悪化し、結果的に休職せざるを得なくなり、「生き甲斐だった仕事まで奪われた」という。 その後、女性は自身のアイデンティティーを守るためには北川被告を処罰するしかないと思い、検察庁に被害を訴えた。北川被告は6月に逮捕・起訴されたが、その後も女性の苦しみは続いた。同僚であった女性副検事が北川被告に捜査情報を流し、女性が「同意していた」と事実とは違う証言をしていたことがわかったのだ。それだけでなく、「金目当ての虚偽告訴ではないか」と女性を誹謗中傷するようなことを検察庁内外に吹聴していたという。