酔いつぶれた女性検察官を自宅に連れ込み…「関西司法のエース」検事正の性暴力の罪深さ
性犯罪の撲滅をめざす検察官への性暴力
被害を受けた女性は、翌日懇親会に同席していた警察官や検事から懇親会の様子などを聞いたことで、自分が被害に遭うまでの経緯を知る。会見でその時の気持ちを彼女は、検事正という立場の被告が泥酔した部下を自宅に送り届けず、家に連れ込んで性交したという事実を知って混乱し、怒り悲しんだと話している。一方で、泥酔した自分を責める気持ちも強く、被害を夫や検察庁の人に知られて、家庭や検事の職を失いたくない、さらに検察幹部として優秀で人望もあると言われていた北川被告を辞職させることは検察組織のためにも避けなければならないと考え、全てを忘れたいと思い悩むようになったと語っている。 こうした気持ちを北川被告にメールで伝えたところ、被告からは一定の謝罪の言葉もあったが、彼女が「全てを忘れたい」と言うと安堵し、「俺の検察人生もこれで終わった。時効がくるまではちゃんと対応する。食事をご馳走する」など軽口を叩いたという。 寺町さんはこう話す。 「性犯罪は証拠が不十分な場合も多く、立件できるか有罪にできるかは、検事の力量にかかっていると言ってもいい。記者会見を拝見して彼女は性犯罪を撲滅するんだという強い意志で捜査手法を突き詰め、公判で立証してきたのだと思います。それは検事にしかできない仕事なんです。彼女のように被害者の立場に立って寄り添いながら捜査をしてくれる人は、被害者や長く被害者支援に取り組んできている私たちが望んでいる検事です。 北川被告は検事正として、彼女が性犯罪捜査に真摯に取り組んでいることを知る立場です。困難な事件をあげてくる女性検事に性犯罪で報いるというのは、彼女がどういう人かわかった上で犯行に及んでいる。そういう意味で屈服させたい、征服したいという支配欲・所有欲を感じます」
「関西のエース」と言われていた被告の「意識」
犯行の間、被害女性は何度も「帰りたい」と訴えたが、北川被告は「これでお前も俺の女だ」と言って性交を続けたという。 「その言葉の裏には全能感のようなものがあったのでは。被告は将来大阪高検の検事長を期待されていたと聞きます。エリート意識や選民意識があったのかもしれません」(寺町さん) 北川被告は1985年に任官し、関西を中心に勤務し、「関西のエース」と言われていた。最高検の監察指導部長や刑事部長を歴任し、2018年2月に大阪地検検事正に就任。いずれは大阪高検の検事長、という話も出ていた。 女性は全てを忘れたいと考え、被害感情に蓋をして今まで以上に仕事に没頭するようになった。しかしその間、頭痛や不眠、フラッシュバックなど心身の変調を来したという。一方の北川被告は通常通りに仕事を続け、女性が担当していた性犯罪事件の決裁を受けるなどの機会に乗じ、女性が被告を訴えないか確認してきたという。