FC東京はミクシィの経営権取得でどう変わるのか?
今シーズンまでJ2の新潟を2年間率いた53歳の指揮官は、FC東京の公式ウェブサイト上で「ボールを愛する攻撃的なスタイルの構築を目指します」と抱負を寄せた。 成績不振の責任を取って11月に退任した長谷川健太監督(現名古屋グランパス監督)が掲げた、堅守速攻の対極に位置するポゼッションスタイルを標榜する新監督を招聘した理由を、川岸氏は「意見を擦り合わせながら決めました」と、子会社化へ向けた協議と同時進行で人選を進めてきたと明かした上でこう続けた。 「目指すサッカーが多くのファン・サポーターの話題になるような、魅力的なスタイルでありたいと考えたときに、アルベル監督が出したコメントと方向性が合致している」 今シーズンのFC東京は一度も上位争いに絡めないままJ1リーグ戦で9位に甘んじ、連覇を目指したYBCルヴァンカップは準決勝で敗退。天皇杯にいたっては順天堂大にまさかの金星を献上して、初戦だった2回戦で姿を消している。 戦力アップのためにも新体制の象徴となるビッグネームの獲得が考えられるなかで、川岸氏は「現時点で具体的なことは申し上げられない」と慎重な発言に終始した。 「アルベル監督と意見を擦り合わせながら強化および編成を進めているところなので、そのなかで発表できることがあるのかな、と思っています」 ピッチ内だけでなく外においても、来シーズンからの経営権取得が正式に決まった直後という状況もあって、川岸氏は具体的な言及を避けた。それでもミクシィにあって、他の中核企業は持ち合わせていない武器があると木村社長は力を込めている。 「これまで培ってきたコミュニケーションのノウハウであるとか、あるいはITのテクノロジーといったものを生かしながら、コミュニケーションとしてのスポーツのポテンシャルをさらに引き出すことができるのではないかと考えています」 FC東京が築き上げてきた歴史や伝統を尊重しながら、SNS運営やスマートフォン向けゲーム事業で培ったノウハウを注入。新たなファン層の開拓を含めて、首都・東京に眠る可能性を追い求めていく。その先に待つ未来を川岸氏はこう語る。 「J1上位の事業規模に伍していく。もしくはトップラインに並んでいく、というところをひとつのマイルストーン(中間目標)として置いていきたい」 昨年度の営業収益のトップは横浜F・マリノスの58億6400万円で、FC東京は8位だった。50億円を上回ったのは、マリノス以外には浦和レッズ、川崎フロンターレ、名古屋の3チーム。まずは再び大台を超えるためのスキームをIT大手のノウハウを生かして作り上げながら、同時進行で戦力面の補強も急ピッチで進めていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)