神宮外苑再開発問題、日比谷公園…木を伐っても伐っても「東京に緑が増えている」発言への違和感
日本では樹木は「本数」でカウントされるのみ!?
世界的には主流になっている「樹冠被覆率」のデータが、しかし、日本には存在しない。「一定の土地面積の中で高木の樹冠が覆っている面積を求めればいいだけ」というが、日本では樹木は「本数」でカウントされるのみ。そのため、いくら樹木を大量に伐採しても若木を沢山植えれば「樹木は増えている」という言い訳をされてしまうようだ。 「樹冠被覆率の基準となる高木も曖昧ですが、特に温暖化抑制の効果を考えるなら、高層ビルの建ち並ぶ場所では基本的に10mを超えるぐらいの高木でないと不十分なんですよ。 しかし、残念ながら日本の街路樹は高さと枝張りを抑制しています。例えば、10m以上の高木を切ったところに新たに小さな木を植えて、それを同じ1本として計算するということ。高木と小さな木では樹冠被覆率が大幅に違います。 街路樹で言えば4、5mの木で樹冠の大きさは1~3平米程度。植えて間もない木は1平米程度。それが10mの高木だと、1本で10平米とか20平米とかになってくるわけです。同じ1本でも樹冠の大きさは年数分異なり、ヒートアイランド抑制効果も大きく異なるわけですね。 ところが今、日比谷公園などで伐採されているのは、100年以上の樹齢の木ですから。100年以上経つ高木をどんどん伐っている東京は、とんでもない街ですよ」 ちなみに、直射日光が当たった路面は通常60℃近くまで上昇するのに対し、直射日光が遮られる樹冠の下では40℃程度と、20℃も低いという。真夏の炎天下に木陰にいるときと、何もない芝生にいるときを想像すれば、その違いは説明するまでもないだろう。 日本が「樹冠被覆率」ではなく、「緑被率」や「本数」を基準に、また「公開空地」を設けることを前提にいま生えている木々を伐採し続けることには、別の問題もあるという。 「日比谷公園にしても神宮外苑にしても基本的に一般の方が誰でもいつでも利用できる場所ですよね。それが、民間資本導入という形で、一般企業が開発によって利益を得ようという行為が、近年特に増えてきています。 例えば、横浜の山下公園とか上野公園にスターバックスのような民間資本の導入があり、お金を稼げる場所として公園を一部使える動きが出てきたわけです。 そうした延長線上にあるのが、日比谷公園と三井不動産の『東京ミッドタウン日比谷』をデッキでつなぎ、日比谷公園を三井不動産のビルの延長線上にある空間として使えるようにしていく計画です。 さらにひどいのは神宮外苑ですよ。いつでも誰でも利用できる空間だったのが、会員制のテニスクラブなどで囲い込みをしてきているんですね。単に緑が減るだけではなく、公的な空間を一部の民間企業が利益のために私物化しているのが問題なのです」