神宮外苑再開発問題、日比谷公園…木を伐っても伐っても「東京に緑が増えている」発言への違和感
また、「緑が増えている」の1つの根拠として東京都が挙げるのは、『みどり率』(緑が地表を覆う部分に公園や池などの水面を加えた面積が、地域全体に占める割合)。東京都のHP内「都内の緑の現状」では、「みどり率の推移」として、’03年、’08年、’13年、’18年の「多摩部」「都全域」「区部」のデータを掲出。近年のみどり率は「横ばい」としている。 また、『緑被率』(平面的に草木などの緑が、建物や道路などの敷地を覆う割合)については千代田区(’10年、’18年)、中央区(’04年、’17年)、港区(’16年、’21年)の3区の「変化」を挙げている。定点でなく、異なる年で、なおかつ8年間、13年間、5年間という異なる年数の変化を全部横並びに示すデータの作成方法の正否に疑問を感じないわけではないが、ともあれ「緑被率」は3区では上がっているということだ。 ◆世界標準は「緑被率」ではなく「樹冠被覆率」 しかし、これら2つの基準で説明するのは日本ならでは。そこにはさまざまな思惑が見えると藤井教授は言う。 「『みどり率』というのは、一般的に学会の中では使われていません。よく使われるのは、『緑被率』ですが、あくまで面積の基準で、植物で覆っている場所は芝生でも広場でも畑でも遊歩道でもビルの屋上の緑化でも全部含まれます。 しかも、地面で考えるのが基本だったところから屋上緑化が進んできた実態を考えれば、高層ビル建設のために拡大解釈に移行していったのだと思います」 一方、温暖化やヒートアイランド現象への影響という観点から、今、世界的に重要視されているのは『樹冠被覆率』だという。「樹冠被覆率」は土地の面積に対して、高木の枝や葉が茂っている部分の割合で、上空から写真を撮って、そこから枝や葉が茂っている部分の割合を算出する。 「この樹冠被覆率は英語では『canopy cover』と言って、例えばアメリカでは『i-Tree』という主にスマホ用のアプリがアメリカ農務省森林局によって提供されていて、検索すると、アメリカの大都市の樹冠被覆率がわかるようになっています。 アメリカ・ニューヨーク市では’35年までに樹冠被覆率を30%に上げるよう目標が掲げられているんですよ。また、オーストラリアのメルボルンはちょっと前まで樹冠被覆率が22%ぐらいだったところ、’30年までに30%に、さらに’40年までには40%にするとしています。 40℃超えするフランスなども少しでも熱がたまらないよう、樹冠被覆率をどんどん増やそうと必死で、リヨンでは樹木憲章が定められ、車の車線を減らして街路樹を増やしているくらいです。 このように、欧米諸国は温暖化抑制を急ピッチで進めていますが、それくらいのスピードでやらないと対応できないということなんです」