福井県観光連盟が推進する「観光データのオープン化」、現状を誰でも見えるカタチに、その取り組みを責任者に聞いてきた
2024年3月16日に北陸新幹線が金沢から敦賀まで延伸される。芦原温泉、福井、越前たけふ、敦賀の4駅が開業する福井県では、観光にとって「100年に1度の好機」と捉え、さまざまな施策を展開している。2024年の目標のひとつは県内消費額1700億円だ。 今年1月1日には能登半島地震が発生したが、福井県での観光関連への影響は一部施設の損壊などを除いて限定的。今後の観光施策やキャンペーンなどは計画通り実施する予定だという。 福井県観光連盟では、観光で稼ぐ地域の実現に向けて観光DXを推進。地域の事業者を巻き込み、「観光の見える化」に取り組んでいる。その中身と福井県の観光が目指す姿とは?観光DXを主導する福井県観光連盟観光地域づくりマネージャーの佐竹正範氏に聞いてきた。
観光データをオープン化、現状を誰でも見えるカタチに
福井県観光連盟は、観光庁の2022年度「DXの推進による観光・地域活性化実証事業」の採択を受けて、地元5社・団体と「福井県観光推進マーケティングデータコンソーシアム」を結成した。参画するのは、福井銀行、福井新聞、福井銀行グループの地域商社「ふくいヒトモノデザイン」、マーケティング支援・システム開発会社「basicmath」、オープンデータ企画支援「B Inc.」。観光領域だけでなく、IT企業や銀行、メディアが連携する全国的にも珍しい座組みで観光DXを推進している。 佐竹氏は、その活動のキーワードとして「オープンデータ」「オープンソース」「オープンロジック」を挙げる。「観光は、現状が把握しづらい世界」であることから、各種データを収集し、それをオープンにすることで、「観光の見える化」を進めている。その中心となるのが、データ・マネージメント・プラットフォーム(DMP)の「福井県観光分析システム(FTAS)」。集客ポイントやキャッシュポイントをデータから整理し、地域の観光プレイヤーに公開している。 データの収集とオープン化の取り組みとしては、2022年度から「答えてHAPPINESSプレゼントキャンペーン」を展開。県内の観光エリア約90ヶ所にQRコードを設置し、アンケート調査を実施した。2022年度は1万8726件、2023年度は9月末日までで1万1755件を回収。旅行者の発地、旅行形態、移動手段、宿泊実績などのデータを収集するだけでなく、昨年と今年との比較も整理し、公開した。 また、満足度ランキングや推奨意向ランキングも数値化。佐竹氏によると、福井県の公式観光ウェブサイト「ふくいドットコム」では、この推奨意向を踏まえながら、トップベージに掲載するエリアを決めている。 福井県のキラーコンテンツの一つ「県立恐竜博物館」では、2023年のリニューアルオープンで事前予約制になったことを受けて、FTASで60日先までの予約状況をリアルタイムで公開。これによって、入館のピーク時間などが詳しく把握できるようになった。このため、恐竜博物館では勤務シフトや効率的な物販品の仕入れが可能になったという。 さらに、恐竜博物館が位置する勝山市でも、入館者と市内の事業者の売り上げが連動していることから、オープンデータを活用することで、ピーク時に合わせた仕入れや人員配置が可能になり、より稼げる体制づくりができるようになった。