福井県観光連盟が推進する「観光データのオープン化」、現状を誰でも見えるカタチに、その取り組みを責任者に聞いてきた
オープン化の基礎は信頼関係
佐竹氏は、コンソーシアムの取り組みを通じて、「事業者間、行政と事業者間などで信頼関係のベースを作っておく必要がある。そうでなければ、ツールからDXは生まれない」と話し、オープンであることの意義とともに、その意義に対する信頼感を醸成していく重要性にも触れた。 また、コンソーシアムの代表企業で事務局を担う「ふくいヒトモノデザイン」代表取締役社長の小畑善敬氏は同社が参画することで「オープンデータ化に向けた実証事業として、信頼性という面で貢献できた」と評価。そのうえで、「県内観光のキープレイヤーとのネットワーク形成や行政機関との関係構築がかなり進んだ」と手応えを示し、その繋がりを活かしながら、今後はDMCとしてインバウンド向けの観光商品の開発にも取り組んでいく考えを示す。 佐竹氏は、将来の観光地経営として「それぞれのプレイヤーが自立分散型で相互に連携しながら、1つの目標に向かってそれぞれが主体的に活動することを目指す」と意欲を示した。
トップアップ型でDXを推進
地域連携DMO(観光地域づくり法人)としてDXを進める福井県観光連盟。佐竹氏は、コンソーシアムによる実証事業が成功した鍵について、「熱量を持ったITエンジニアが地域にいたこと」と「各社・各組織とのキーマンと繋がることができこと」を挙げたうえで、「それぞれの熱量が利己的ではなく利他的。こういう人たちがイノベーションを起こすのだろう」と続けた。 また、佐竹氏は観光DXにおけるDMOの役割にも言及。従来の観光協会とは異なる点は、「トップアップ型であること」と明快だ。「DMOは、顧客視点で先行するプレイヤーと一緒に先に走っていく」。人口が増加している時代であれば、落ちこぼれを出さないようなボトムアップ型でもよかったが、人口減少が急速に進む現代、先に行く人を上に引き上げていくことが重要との考えだ。 佐竹氏は、福井県観光連盟に参画する際、「トップアップ型でやると、色々な方面から文句が来るかもしれません。でも、そうでなければ、私がやる意味がない」と話したという。コンソーシアムによるDXも、熱量のある人や事業者をさらに押し上げる形で進めてきた。今後は、データ利用を広げていくために、縦への推進力とともに、横と下への浸透も必要になってくる。 コンソーシアムでは、FTAS利用を増やす取り組みとして、行政や事業者向けの勉強会やコンサルティング事業者による事業者向けの勉強会を開催。また、将来のシビックテック人材の育成を目的に高校生向けのプログラムも実施している。 観光DXが消費額増加という実利にどのように結びついていくのか。福井県の挑戦は続く。 聞き手:トラベルボイス編集長 山岡薫 記事・取材:トラベルジャーナリスト 山田友樹
トラベルボイス編集部