福井県観光連盟が推進する「観光データのオープン化」、現状を誰でも見えるカタチに、その取り組みを責任者に聞いてきた
エリアを巻き込んだデータ収集
観光施設だけでなく、エリアを巻き込んだデータ収集も進んでいる。福井県の一大観光エリアである芦原温泉では、芦原温泉旅館協同組合の15社のうち10社が宿泊データの提供に協力。同組合では2022年に「ReBorn(リボーン)プロジェクト」という5か年計画を策定。その中で、「マーケティング戦略立案」をテーマにした委員会も立ち上げられ、将来に向けてデータを把握した戦略を立てていくことが重要との認識を共有した。 個別の宿泊施設が宿泊データを他者に提供することは、それぞれの手の内を明かすことになる。この懸念に対して、佐竹氏は各社の理解を得るために繰り返しデータの必要性を説明したという。佐竹氏は「重要なことは、エリアに人を呼び込むためのマーケティング」と話す。 そして、人を呼び込むだけでなく、自然災害などが発生した時にエリアとして観光客の動向を掴むことに役立つ。能登半島地震の発生後、芦原温泉の宿泊データをみると1月6日~8日の3連休の宿泊予約が1月1日と1月5日の比較で23%減少していることがわかった。地域全体でキャンセルが多く発生している状況を把握し、県では年明けから開始する計画だった宿泊キャンペーンの対象地域を急遽拡大。当初、敦賀開業直前の出控えが懸念される時期に北陸新幹線沿線および北関東地域としていたキャンペーンの対象地域を、全国47都道府県に拡大した。エリア単位で宿泊者の動向を把握・分析することで、次の一手の打つヒントとなった。 このほか、福井銀行と福井新聞が共同で立ち上げた決済アプリ「RENEWPay」では、地域の決済データを収集。決済の日時、場所、金額、性別、年代などをグラフ化した。また、協力店舗のPOSデータ、インターネット広告の結果など多様なデータを組み合わせて、商品開発に繋げる取り組みも実施。さらに、決済データとアンケートデータとの突合も実証した。 キーワードの一つ「オープンロジック」については、佐竹氏は「何か判断に迷ったときに、立ち戻れる場所」と説明。また、合意形成の入口としてオープンであることの重要性を強調する。さらに、議会では議員からの質問に対して、行政側がデータを用いてロジカルに回答するケースも出てきたという。