「根が暗くて、うっとうしい」性格の作者だからこそ描けた『源氏物語』。いよいよ完成か!?【NHK大河『光る君へ』#31】
紫式部を中心に平安の女たち、平安の男たちを描いた、大河ドラマ『光る君へ』の第31話が8月18日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。 【画像】NHK大河『光る君へ』#31
まひろの「根の暗さ」は作家としての強みに。「個性」や「人間観」が反映された
本放送には、まひろ(吉高由里子)が後の『源氏物語』を生み出すにあたってさまざまな声を集め、自身を見つめていた様子が描かれていました。 まひろは先に世に出た『枕草子』の感想を周囲に聞き、読み手が何を求めているのか把握しようと試みます。『枕草子』を「面白くない」と一蹴したあかね(泉里香)にもまひろはこの物語の感想を再度聞きます。 あかねは「『枕草子』は気が利いてはいるけれど 人肌のぬくもりがないでしょ」と、面白く思わなかった理由を具体的にまひろに伝えます。 また、まひろは創作の前に自身を客観的に見つめ直すこともします。弟の惟規(高杉真宙)には人と話すことで気付くことがあるといった理由から、「じゃあ私らしさって何?」と自分について尋ねていました。 惟規は「そういうことをグダグダ考えるところが姉上らしいよ」「そういう ややこしいところ」「根が暗くて うっとうしいところ」と、弟として思うことをストレートに伝えます。すると、まひろは「根が暗くて うっとうしい…」と弟の言葉を繰り返し、何かをひらめいたように立ち去りました。 紫式部は内向的で、性格が暗いと言われることが多いですし、『源氏物語』には人間のダークな部分が色濃く描かれていますが、惟規の発言はまひろの創作において大きな影響を与えたと思われます。また、紫式部にはグダグダ考えるところがあったようですが、こうした特性もまひろは受け継いでいるようです。 本作では、まひろが綴る物語の特色として人間が抱える暗澹とした部分が重んじられていると考えられます。こうした見方は、道長(柄本佑)がまひろの物語の感想を「飽きずに楽しく読めた」と伝えると、「楽しいだけでございますよね」と不満そうにする姿にもいえるでしょう。彼女は人生が楽しいことだけではないように、物語にも楽しさだけではなく、何か別の要素を織り込もうとします。 物語についてあれこれ悩む中で、一条天皇(塩野瑛久)の人柄や若き日のことなどについて聞きたいと道長に頼みます。彼から話を聞き終わったまひろは「帝も また 人でおわすということですね」「帝のご乱心も人でおわすからでございましょう」と結論付けます。そして、道長も「それを表に出されないのも 人ゆえか」とつぶやいています。 『源氏物語』には美しい光源氏が抱える闇、心の格闘が描かれています。また、本書において人間の本質の描写も特長です。愛する人を追い続けるのも、他人に嫉妬するのも、ねたみから心ない行動に走るのも、権力を渇望するのも特定の時代における人間の特性というよりも、人間全体の特性だと思います。 "人間とは何か..."という問いの答えを探り出すかのように、まひろは言葉をつないでいきます。