なぜ久保建英はジャマイカ戦で驚愕の4人股抜きシュートを決めることができたのか?
ブロックに飛び込む相手選手の股間をすり抜けたシュートが、ゴールネットを揺らす光景は何度も見てきた。その後方にいる選手の股間も抜くゴールも稀に生まれる。 しかし、3人目の股間まで破る確率は一気に低くなり、4人目ともなるともはやフィクションの世界のシーンとなる。しかし、20歳の久保建英(ヘタフェ)が現実のピッチで、前方に立ちふさがる4人の股間を立て続けに撃ち抜く奇跡のゴールを決めた。 豊田スタジアムでジャマイカ代表と対峙した12日の国際親善試合。東京五輪に臨む18人のU-24日本代表メンバーの発表前で最後となる一戦を、4-0の快勝で締める呼び水となった神懸かり的な先制点は、前半32分に久保の左足からもたらされた。 ジャマイカ陣内の右サイドの奥深くで、フランス・リーグアンの強豪オリンピック・マルセイユから浦和レッズへの移籍が発表されたばかりのDF酒井宏樹からのスローインを、ノーマークの状態で受けた久保がすかさず縦へ抜け出した。 ペナルティーエリアの右横で身体をゴールの方向へ向けて、慌ててマークについたセンターバック、カーティス・ティルトと対峙し、エリア内へ侵入しながら、ティルトがブロックに飛び込んできた刹那に利き足の左足を振り抜いた。 サイドステップを踏んだティルトの両足の間には、どうしても隙間が生まれる。久保自身も試合後に「1枚目は狙いました」と、シュートを選択した意図を明かした。 しかし、ティルトの後方に左サイドバックのアマリ・ベル、もう一人のセンターバックでキャプテンのリアム・ムーア、さらにゴールキーパーのディロン・バーンズまでがほぼ一直線に並んだ、偶然に導かれた状況に関しては苦笑しながらこう振り返った。 「それ以降はわからないです。中に切れ込んだときに前回はニアに打ったので、ちょっとファー目に打とうかなと。けど、そんな股抜きは狙っていないんですよ」 計算通りに目の前にいるティルトの股間を撃ち抜いた、グラウンダーの強烈なシュートはベルとムーアの両足の間を一気に通過。ムーアのブラインドになった形で反応が遅れ、体勢を崩したバーンズの股間をもすり抜けてゴールへ吸い込まれていった。 日本サッカー協会(JFA)が公式ツイッターを介して、リアルタイムで世界中へ配信している動画に「狂気の沙汰だ」なるコメントが寄せられた先制弾。全員がイングランドでプレーする4人の股間を華麗に通した久保は直後に見せた、左手の人さし指、右手の人さし指と中指で『K』を作ったゴールパフォーマンスの意味をこう明かした。 「前の試合のときに、友だちに『やるよ』と言って忘れていたので、今日決めたらやろうかな、と思っていました」 友人のイニシャルが『K』だった微笑ましいエピソードを生んだ、5日のU-24ガーナ代表戦(ベスト電器スタジアム)の2点目に続くゴールは、久保をして「前回はニアに――」と振り返らせた、前半19分のあわやの一撃が伏線となっていた。