なぜ久保建英はジャマイカ戦で驚愕の4人股抜きシュートを決めることができたのか?
左タッチライン際でパスを受けた左サイドバック、旗手怜央(川崎フロンターレ)に対して、トップ下で先発していた久保が右手で前方を指さしながらスプリントを開始する。目の前に広がっていた大きなスペースは、左サイドハーフで先発していたドリブラー、三笘薫(川崎)の存在もあって必然的に生まれたものでもあった。 「試合前に旗手選手と話をしていて、基本的に三笘選手が外に張りたがるタイプなので、そういうときには間のスペースが空いてくると。そこに自分が入っていってフリーだったらパスを出すし、無理そうだったら旗手選手へ落としてくれれば逆サイドに展開する、という感じだったので、そこは狙い通りにできたのかなと思います」 外側に開いていく三笘に、ジャマイカのムーアがたまらずひきつけられる。ポッカリと空いたスペースへ走り込んだ久保は旗手が斜め右前へ放ったスルーパスを呼び込み、ペナルティーエリア内の左側へ侵入した直後に、迷わずに左足を一閃した。 バーンズがケアしていた、ニアの狭い空間を狙った強烈な一撃は惜しくも左ポストに嫌われた。それでも左サイドで旗手、三笘との3人で生み出したコンビネーションと決定機に久保は大きな手応えを感じていた。 「今日は左サイドでの連携に気をつけていたというか。右サイドではけっこうわかり合えているので、左サイドでもトップ下として顔を出すことも含めて、均等とまではいかないまでも、自分のところでいかに数的優位を作るのかも意識していました」 6-0で勝利したU-24ガーナ戦でも久保はトップ下として先発。右サイドの堂安律(ビーレフェルト)と頻繁にポジションチェンジを繰り返す、以心伝心のコンビネーションで相手守備陣を翻弄し続けた。 ならば、左サイドとの関係はどのように構築すればいいのか。三笘にしろ、後半途中から出場した相馬勇紀(名古屋グランパス)にしろ、左タッチライン際を主戦場として、1対1の勝負に持ち込むスタイルに絶対的な自信を持つ。 仲間たちの特長を理解した上で状況によって三笘を“囮”に使う、直接はボールを介さないコンビネーションが可能になる。川崎の同期生として三笘のプレースタイルを熟知する、旗手も加えた左サイドでの好連携が久保の言葉を弾ませた。 日本代表とのチャリティーマッチを含めて、五輪イヤーに行われた実戦5試合ですべてトップ下として先発した。あえてオーバーエイジを招集しなかった攻撃陣を引っ張っていく覚悟と決意が、久保が放つ圧倒的な存在感から伝わってくる。