祖父は「55歳で定年」したそうです。今は定年後も60代で働いている人が多いですが、定年後に働きつづけるメリット・デメリットを教えてください。
「定年後、長生きをして老後のお金が不足したら?」と考えて、「働けるうちは働く」という選択をする人が増えてきています。 ▼高齢者の「4人に1人」は働いている!? 平均年収はどのくらい? 働くことには収入を得るだけでなく、規則正しい生活ができたり、人との交流が生まれたり、やりがいや生きがいを感じたりするなどのメリットがあります。定年後、働きつづけるメリットとデメリットを知り、自分自身は老後どのように働くことがベストなのかを考えてみましょう。
60歳以上で働いている人の割合と年収はどのくらい?
内閣府「令和5年版高齢社会白書」の「年齢階級別就業率の推移」によると、 60歳以上の年齢を5歳ごとに区切った場合、令和4(2022)年の就業率は、次のとおりです。 ●60~64歳:73% ●65~69歳:50.8%(2人に1人) ●70~74歳:33.5%(3人に1人) ●75歳以上:11.0%(9人に1人) いすれも平成24(2012)年の就業率と比較すると、60~64歳は15.3ポイント、65~69歳は13.7ポイント、70~74歳は10.5ポイント、75歳以上は2.6ポイント伸びています。 また、厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、男女合わせた60~64歳の平均賃金(令和5年6月分として支払われた所定内給与額の平均)は30万5900円(年収367万800円)、65~69歳の平均賃金は26万9800円(年収323万7600円)となっています。
定年後、働きつづけることのメリット
定年後、働きつづけるメリットには何があるのでしょうか。働くことで次の3つのメリットが得られます。 ■メリット1. 年金以外に収入があれば、安定した生活を維持できる 老後の大きな収入源の柱となる「公的年金」は、原則65歳から受給開始となります。厚生労働省年金局「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、「国民年金」の受給権者の平均年金月額は、次のとおりです。 ・全体:5万6316円(うち男性:5万8798円、女性:5万4426円) また、「厚生年金(国民年金を含む)」の平均月額は次のとおりです。 ・全体14万3973円(うち男性:16万3875円、女性:10万4878円) 次に、夫婦別に見てみましょう。単純に上記金額を足してみますと、 ●共働き夫婦の場合:26万8753円(=16万3875円+10万4878円) ●会社員と専業主婦の場合:21万8301円(=16万3875円+5万4426円) ●自営業者の夫婦の場合:11万3224円(=5万8798円+5万4426円) となります。 次に、老後の生活費を見てみましょう。 ちなみに、(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」によると、夫婦2人が老後生活を送るうえで必要と考えられる最低日常生活費は、平均で23万2000円となっています。例えば、平均的な会社員と専業主婦の場合で、年金収入と生活費がほぼトントンになるといえます。 しかし、年金収入だけで暮らすとして、日常の暮らしには支障がないにしても、趣味や旅行を満喫するには、余裕がないといえるでしょう。 また、自営業など国民年金だけに加入していた場合、まとまった老後資金の貯蓄があればよいのですが、年金だけであれば生活するのは難しいといえます。老後も働くことができれば、安定した生活を維持できます。 ■メリット2. 社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できる 定年後も働きつづけ、要件を満たしていれば、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できます。今までと同様の健康保険に加入して、健康診断や人間ドックなどを割安に受けることができます。 また、厚生年金には満70歳まで加入することができます。厚生年金に加入すると「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の両方を受給できます。老齢厚生年金の受給額は、厚生年金の被保険者としての加入期間と、働いていたときの平均標準報酬額によって計算されます。 定年後も厚生年金に加入し、厚生年金加入期間が長くなるほど、将来もらえる老齢厚生年金受給額が増えることになります。 ■メリット3. 健康が維持できる 仕事をつづけることで、規則正しい生活リズムが維持できます。通勤や業務で体を動かす機会が持て、健康の増進につながります。また、社会への貢献ができるため、生きがいになるでしょう。