「富士山」で噴火がおこったら…飛んでくる「噴石」は直前まで「予測不可能」という驚愕の事実
例年、富士山では夏の日差しが眩しくなる7月初頭に山開きを迎えます(ルートにより数日の違いがあります)。9月10日までの期間、土・休日、お盆を中心に、大変な賑わいを見せます。また、この時期は、高原の過ごしやすい環境を求めて、登山目的以外の観光客も多く、山頂から山麓まで大変賑わう時期です。 【画像】日本の火山で起こったら…町が「消滅」するほどの「火山泥流」その爪痕 さて、これまで富士山が噴火した時の被害を予測し、どのように対処していけば良いのか、どのようなことを知っておくべきかを、一連の記事でお伝えしてきました。今回は、火口から比較的近く、噴火直後に被害に遭いやすい「噴石」とその被害、防災について考えてみます。 もし訪れる人が多い時期に噴火が起こったら? 富士山に限らず、活火山の近くを訪れる際には、ぜひ知っておきたい情報です。 *本稿は、ブルーバックス『富士山噴火と南海トラフ』の内容を再構成してお送りします。
噴石の特徴は「早い」「予測がつかない」
噴火が爆発的になると、火山灰のほかに小石や大きな岩が空から降ってくる。噴火の際に火口から放出される、火山灰より大きな岩の塊のことを「噴石」という。 これまでに述べた火山灰や溶岩流と違って、噴石は上空から猛スピードで降ってくるため、人間に直接的で深刻な被害をもたらす火山噴出物である。 噴石は飛ぶ速度が速いため、直接当たればケガをし、さらに死亡する可能性も十分にある。そして噴石は多くの場合に屋根や壁を貫通し、建造物を破壊する。また、火山弾など高温の物質が降ってくる場合には、火傷(やけど)をしたり火災を引き起こすこともある。 2014年9月に起きた御嶽山の噴火では、火口周辺にい60名近い登山客が犠牲となったが、多くの命を奪ったのは突然降り出した噴石だった。噴火の規模が小さい割に多大の人的被害がもたらされたことに、火山関係者は大きなショックを受けた。 拙著『火山はすごい』(PHP文庫)でも取り上げたが、火口から雨のように降り注いだ噴石の速度は、火口から1キロメートル離れた場所でも秒速100メートルを超えるというすさまじさだった。そのため噴石に直接当たらなくとも、地面にぶつかって砕けた破片が当たるだけでも致命傷となった。 例年、富士山は7月初頭に山開きされ、9月いっぱいまでがピークである。はたしてこの時期に噴火が起きたら、と考えると、非常に恐ろしく感じる。今回は、この噴石と、やはり噴火時には突然噴出してくる火山弾について述べてみよう。