「富士山」で噴火がおこったら…飛んでくる「噴石」は直前まで「予測不可能」という驚愕の事実
火口の形にも左右される「飛んでくる方向」
噴石の飛んでくる方向は、火口の形にも左右される。火口が開いた、つまり火口をつくっている壁が低い方角には、より大きな、そしてより多くの噴石が飛んでいく。したがって、空中写真で火口の形をくわしく知っておけば、どの方角に噴石が飛びやすいかの予測がつく。 しかし、噴火している最中には、火口の地形が刻々変わることが多い。大きな噴火になると、火口の壁が崩れたりするからである。こうした火口の形状の変化にたえず気を配ることは、一般の人には難しいだろう。
予測の難しい「噴石や火山弾」
噴石や火山弾の被害は、主に噴火が始まった直後に発生する。火口の地下で火山ガスの圧力が高まり、上に蓋ふたをしている岩石などを一気に吹き飛ばして穴を開けるからだ。このような爆発的な噴火の立ち上がりを、観測によって予測するのは、現状では困難である。 2004年9月1日の浅間山の噴火では、最初の爆発は何の前ぶれもなく突然始まった。まさに寝耳に水の状態で大量の噴石が飛散し、山麓の建物に被害が出た。これは浅間山にとって21年ぶりの噴火だったが、その最初の爆発を、予知することができなかったのである。 その後の浅間山では、2~3数回の噴火を経過したあとでは、地震の増加、地殻変動、微弱な重力変化などを観測することによって、数時間前に次の噴火を予測できる場合もあった。このように、噴火が安定した状態になれば、噴石の放出をある程度、予知することも可能となりつつある。 1955年以来、噴石を頻繁に放出している桜島火山では、地殻変動の詳細な連続観測が続けられている。この結果、爆発的な噴火が起きる前に、山体のふくらみや特有の地震発生などを検知することが可能となった。しかし、1986年のように、通常の規模を大幅に上まわる噴石が例外的に飛ぶこともある。 噴石放出の予知は、まだ研究途上にある。いまの段階で知っておくべきことは、噴火が始まったら、真っ先に降ってくる可能性が高いのは噴石である、ということである。また、たとえ小規模な噴火であっても、火口の周辺には無数の噴石が落下することも覚えておいていただきたい。 ◇ 噴火が起こると、真っ先に起こるのが「噴石の落下」で、それは火口に近いほどその被害が大きいことが予想される――すなわち登山客の増える山開き後の被害は、とくに大きなものとなることが懸念されると言えましょう。 さて、噴火のタイプによって、噴石の起こり方や影響範囲はどのように違うのでしょうか? 富士山が噴火した場合に予想される噴火様式から、噴石の起こり方をシミュレーションしてみたいと思います。 ※続きは、下の【関連記事】にある、〈「富士山噴火」で「噴石」を降らせる噴火「2タイプ」をシミュレーション…知っておくべきは「危険範囲」と「火口位置」〉からご覧いただけます! 富士山噴火と南海トラフ――海が揺さぶる陸のマグマ
鎌田 浩毅(京都大学名誉教授)