「富士山」で噴火がおこったら…飛んでくる「噴石」は直前まで「予測不可能」という驚愕の事実
噴石とは何か
噴石の材料は、それまでに火口を埋めていた溶岩などである。これらが噴火によって砕かれ、 さまざまな大きさの岩の塊(岩塊・がんかい)となって空高く放り上げられる。さらに噴火が穏やかなものから爆発的なものへと変化すると、これらの岩はかなり遠くにまで放出される。 岩塊の直径が数十センチメートル以上になると、空気の抵抗は無視できるほど小さくなる。こ のような大きな岩塊は、最初に放り出された力のままに、放物線を描いて飛んでいく。 これを放物線軌道と呼び、最初に射出される速さ(初速)と、放り出される角度(射出角)が決まれば、 どこに落ちるかが予測できる。弾道方程式といわれるもので、高校の物理学で習う知識である。 したがって、大きな噴石は飛んでいく方向が予測できるのだ。 また、噴石の大きさと飛んだ距離のデータを集めることにより、過去の噴火における爆発エネルギーを計算することもできる。 噴石の中でも直径約10センチメートル以下の小さな岩は、空気抵抗が大きくなり、風に流されることになる。これらは、噴火の最初に火口から勢いよく立ち昇るガスとともに、上空に巻き上げられる。柱状に立ち昇った噴煙を噴煙柱というが、この噴煙柱に含まれている物質が上空へ達すると、風によって横方向へ流される。こうして小さな噴出物は、火口近くに堆積するだけでなく、風下へもどんどん運ばれる。 このように、噴石は大きさによって飛び方と流され方が違うことが大事なポイントである。
大きさによる分類とその理由
噴石は大きさで区分されている。一般には6センチメートルより大きなものは「火山岩塊」と呼ばれる。それ以下のものは「火山礫」という。「礫」とは小石のことである。 ただし火山学上の厳密な定義では、この境界は6センチメートルではなく、64ミリメートルと定められている。64という一見、中途半端な数字である理由は、火山灰と火山礫の境が2ミリメートルであることにも関係している。 噴火現象は小さいものから巨大なものまで幅が広いので、2のn乗という基準で決めてきた。そこで、空気抵抗の影響が少なくなる約10センチメートルに近い64ミリメートルを採用したのである。 火山岩塊の大きさには上限がない。なかには、直径が数十メートルに及ぶものまである。火口の近傍には、しばしば人の身の丈たけを超えるような大きな岩が転がっている。 このほかに、噴石と同じく、噴火の際に火口から飛び出すものに火山弾がある。 まさに、空中を弾丸のように飛んでくることからこう呼ばれる。噴石と別の名前で呼んで区別するのは、マグマがまだ軟らかい状態であるため、いろいろな形に変形するからである。物理的な挙動は、火山弾も噴石とほぼ同じと考えて差し支えない。