「富士山」で噴火がおこったら…飛んでくる「噴石」は直前まで「予測不可能」という驚愕の事実
深刻な噴石の被害
噴石が落下した地点では、地面に大きな穴が開く。2000年の有珠山の噴火でも、国道230号に多数の噴石が降ってきて、建物や道路が穴だらけになった。 同年8月に三宅島の山頂火口から放出された噴石の直径は1メートルもあり、都道に大きな穴を開けた。また、山頂付近の公衆トイレが激しく破壊された。 噴石の予測は難しいので、火山の専門家ですら被害に遭ったことがある。 南米コロンビアにあるガレラス火山の1993年噴火では、噴石により9人の犠牲者が出た。火口の近傍にいた人たちが、突然始まった小規模な噴火で飛ばされた噴石に当たって死亡したのである。このうち6人は調査中の火山学者であり、噴石被害を防ぐ難しさをあらためて知らしめた。
予知が難しい噴石
噴石は当たれば即死することがあるように、たいへん危険な現象である。噴石が降ってくるなかで被害を食い止めることは非常に困難ともいえよう。 噴石が建物にぶつかるときの衝撃力は、ぶつかる時間を長くしてやれば小さくすることができる。したがって、建物の屋根に土嚢(どのう)を積むなどで衝突の被害を軽減できる。しかし、これでは限定的な効果しか期待できず、根本的な防災にはならない。 噴石被害に遭わない最も有効な方法は、降ってくる可能性のある場所から離れることしかない。経験的に噴石は、火口から4キロメートル程度の範囲に降ることが多い。だが直径1メートルを超えるような大型の噴石は、火口から2キロメートルの範囲内に落下する。たとえば桜島火山の25年間にわたる観測結果では、火口から3~6キロメートルにまで届いた噴石は、いずれも直径数センチメートルだった。 次に、噴石の飛んでくる方向は、上空を吹いている風向きに左右される。風下側では、かなり大きな噴石が飛来してくる。また、小さめの火山礫サイズの噴石(2~64ミリメートル)は、上空の風に乗ってかなり遠くまで運ばれる。 たとえば高さ3キロメートルの噴煙柱と一緒に巻き上げられた直径1センチメートルの小石は、毎秒20メートルの風速では7キロメートル先まで飛んでいく。4キロメートル離れた場所には、約3分で到達する。 このように、小さめの噴石の飛び方は風向と風速に左右されるので、地元の気象台が発表する気象情報を知ること、また噴火に気づいたら噴煙の流れ方に注意することが重要である。