なぜ飛行機は定刻通り飛ばないのか――根深い空港の「特殊事情」に加えて航空会社の「甘え」も?
航空会社にも定時運行を軽んじる「甘え」が
最後に航空会社側のスタンスについて見てみよう。 世界的な航空会社間の競争の激化、ならびにLCCの台頭により、大手の航空会社も従来のような余裕のある運航スケジュールをたてることをしなくなった。LCC同様、航空機を最大限稼働させなければならないという考えを抱くようになり、着陸してから次の離陸までの間隔を以前よりもタイトにしてきている。 こうしていったんどこかで遅延が生じれば、それが後続の便に受け継がれていき、最終的にはかなりの遅れとなりかねない体質となっているようだ。 もはや、定時性の維持は航空会社にとって、それほど重要ではなくなったのでは、と考えざるを得ない。 たとえば、地上職員も、定時運行よりもとにかくマニュアル通りに顧客を取り扱うという姿勢が目立つ。安全性に支障をきたすというのであれば問題はあるが、そうでないならば、たとえ機内清掃の手間を若干省いてでも、定刻に飛ばそうというスタッフの気概があってもいいはずだ。それが全く感じられなくなっているのは筆者が古い世代に属しているからか。 筆者が空港で勤務していたときには、課長が、安全性を保ちながらも定刻で飛ばすための融通を利かせた判断を下し、部下もそれに応じて定時性を守るために情熱を燃やす気概があった。なぜなら、航空機を利用する中には、特にビジネスパーソンなど、速く移動することの時間的価値を購入している人が多くいるという認識が共有されていたからである。 遅延を諸事情から当然許されるものとして考える「甘え」が航空会社側にあるとするならば、それも問題ではないだろうか。
桜美林大学航空マネジメント学群教授 戸崎肇