春香クリスティーン「子育ては自分の力だけではどうにもならない」1児の母になって見えた社会とのつながり
産後一番助かったのは、産じょく入院。身の周りのセーフティネットを作っておくことが大切
――芸能活動を休業する前は政治や行政などにも関心を寄せ、コメンテーターとしても活躍されていましたが、お子さんを育てるようになってから政治や行政に対しての見方や関わり方は変わりましたか。 春香クリスティーン: 子どもができると行政との関わりがすごく密になるんだな、と驚きました。妊娠した瞬間から役所に行く機会が増えますし、行政との書類のやり取りも増えます。 自治体からたくさん資料が送られてくるんですけど、ちゃんと目を通すと意外といろいろなサービスがあるんですよ。私が出産した時には、東京都でコロナ禍に出産した家庭を対象とする「出産応援事業」という支援がありました。子育て用品を購入できる専用サイトで使える10万円分のポイントをいただけたので、ベビー用品を購入させていただきました。 その都度、いろいろと制度は変わりますけれども、やっぱりこまめにチェックすることが大事なんだな、と。子どもを通して社会や政治との接点が1つ増えて、その目線から行政を評価したり利用したりすることで、自分と社会とのつながりを改めて意識するようにもなりましたね。 ――行政サービスを受ける中で利用して良かったと思ったことはありましたか。 春香クリスティーン: 一番助かったのは、産じょく入院ですね。出産後の入院期間を終えたあとに、産後ケアをするための入院です。 私が当時住んでいた場所では、事前登録制で枠が空いていれば入院できる、というものでした。運良く枠が空いていて入院できたので、ゆっくりと体を休められて、助産師さんに育児に関する心配事をいろいろと相談できました。そういった環境があったおかげで、自宅に帰ってからの子育てもやっていけそうだ、と安心できたんです。 セーフティネットとして、いろいろなサポートがあることを知っておくだけでも違うと思いました。自治体によって異なりますが、妊娠中、産後といろいろなサポート制度があるんですよね。私の場合は、妊娠中、自治体が実施している保健師さんとの面談に参加しました。子育てに向けて不安なことや体調についてなど、いろいろと相談できて、「ここまでしっかりと話を聞いていただけるんだ」と嬉しかったです。 仕事で地方に行く機会がありますが、場所によっては親戚が近くに住んでいたり、地域のつながりやネットワークが強かったりして、子育てがしやすそうだと感じることもあります。ただ、都心では、妊娠から出産、子育てと、夫婦2人ですべてをこなすのはかなり大変だと実感しました。都会であればあるほど近くに両親や親戚が住んでいないケースは多く、孤立しやすいと感じます。そうならないようにセーフティネットを作っていかなければいけませんし、自治体のサポートもしっかり活用していく必要があると思います。 ――一方で、待機児童問題など、なかなか解決されない問題もあります。 春香クリスティーン: 命を預けるわけですから、やっぱり自分が安心できるところに預けたいとは思いますが、現状はそもそも選べる状況ではないんですよね。 選択肢がない中で、空いている枠になんとか入れられたとしても、認可外保育園だと費用の負担が大きいので、働いているのにもかかわらず結局赤字になってしまうケースもあります。「そこまでして保育園に預けて、働きに出る必要があるんだろうか?」と思う方もいらっしゃると思うんですよね。 子育ては、ただ「子どもを育てる」ということだけではなく、親の生き方、働き方、将来設計にも関わること。「子育て社会」というのであれば、子育て世帯に限った話ではなく、少子化対策を含めて考えていかなければならないことなのかなと思います。 ――現在の政権は少子化対策に対して、予算倍増計画や骨太の方針を打ち出しています。当事者として、それらのメッセージについてはどう感じていますか。 春香クリスティーン: 少子化対策に関しては、政府が号令を出すことはすごく大事だと思っています。社会にとって必要なことだと発信していかないと、少子化に歯止めがかかりません。行政やメディア、子育て世帯やそうでない人々など、それぞれが抱える課題を洗い出していくことで、「子どもを持つこと」についての理解や見方が変わっていくと思います。 行政によって変わる部分はもちろんありますが、多くの人が当事者意識を持つことによって、変わっていく部分も大きいと思うんです。政府からのメッセージによって、子育ての当事者だけでなくみんなが「仕組みを変えないといけないんだ」という空気を感じることで、たとえば身近なところでいうと、会社内での制度が変わるかもしれません。自分の世代も含め、子どもが大きくなった時にどう暮らしていけるのか、そう考えるだけでも、未来につながる第一歩なんじゃないかなと思います。
【関連記事】
- 子どもの自殺が多い「9月1日」――内田也哉子が識者と考える「もし自分の子どもに学校に行きたくないと言われたら?」#今つらいあなたへ
- 「野球を楽しむために何が必要か、本人に考えさせる」工藤公康が実践した監督としての心構え
- 「家という安心できる居場所から、学校という社会に出るのが怖かった」不登校を経験した女子大生クリエイター・わたげが語る、ぼっち活の魅力 #今つらいあなたへ
- ほしのディスコ「初対面の人に顔を笑われた」 先天性の口唇口蓋裂で生きづらさを感じた子ども時代 #今つらいあなたへ
- 「学校だけが“世界”になってる子は多いけど、他にもいっぱいある」みりちゃむが学校の外に居場所を作った理由 #今つらいあなたへ