海外レポート(2):異なる魅力を放つ、パリ国際大学都市にあるル・コルビュジエのスイスとブラジル学生会館
あまりに広くて場所が分からず、案内板の前で学生に聞いてみたが、「ル・コルビュジエの建物」にはピンときていなかった。スイスとブラジルの建物と伝えて、一緒に探してもらうと「7L」がブラジル館、「7K」がスイス館だと分かった。ちなみに、途中の「7C」が日本館だった。
パリ国際大学都市には日本館もある。館内には藤田嗣治の絵があるらしい。
サヴォア邸同様に、近代建築の5原則が実現された「スイス学生会館」
スイス学生会館前の説明看板には、数学者のルドルフ・フューター(Rudolf Fueter)がル・コルビュジエに依頼して、1933年に開業したと記載されている。設計はル・コルビュジエとピエール・ジャンヌレ。サヴォア邸(1931年)と同時期のこの建物は、「近代建築の5原則」が実現されている。インテリアデザインにも特徴があるという。
とはいえ着いてみたら、管理員の休憩時間が12時~14時までで閉まっていたので、14時まで外観を見て回ることにした。 スイス学生会館を主道路側から見ると、湾曲して突き出た低層のホール棟と奥の寄宿棟に、それをつなぐ階段室に分かれていることが分かる。右側に回って見ると、低層棟、ガラスブロックの階段室、ピロティに支えられた寄宿棟の構成がもっとよく分かった。
さらに右側、主道路の裏側に回ると外観は姿を変える。寄宿棟の連続した水平窓、屋上にテラスがあることも推測できる。たしかに、サヴォア邸と同じ手法が随所に使われているようだ。
休憩から戻った管理員に2€(2024年8月時点)の入館料を支払い、建物内を見せてもらうことができた。地上階(日本の1階部分)と日本の2階部分にある105号室が見学できるという。
まず、ロビーに入ると、楕円(だえん)形の柱に階段が取り付けられた階段室の空間がある。その階段は美しくデザインされている。さらに奥(写真右手)に進むと、必見の低層ホール棟の談話室がある。
湾曲した談話室(salon courbe)の大きな絵画は、第二次世界大戦後の1948年にル・コルビュジエが描いたもの。ル・コルビュジエやシャルロット・ペリアンがデザインした椅子など、家具もトータルデザインをしている。 階段室に戻って2階に上がり、105号室を探した。探し当てた105号室は、コンパクトながら窓から外が見える開放感と機能的な家具の配置で、暮らしやすそうだ。 ちなみに、スイス学生会館は、ル・コルビュジエの建築作品として世界遺産に登録する過程で、残念ながら対象からはずれた。
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