海外レポート(2):異なる魅力を放つ、パリ国際大学都市にあるル・コルビュジエのスイスとブラジル学生会館
ルシオ・コスタと仲たがい?晩年の作品「ブラジル学生会館」
次に訪れたブラジル学生会館は、壁面に沿って湾曲した石積みの低層棟やピロティで支えた寄宿棟など、スイス学生会館とよく似ている。ただし、スイス学生会館とは異なる経緯がある。
主要道路の裏側から見た寄宿棟。ブラジルらしいカラフルな色使いが印象的
ブラジル学生会館は、当初、ルシオ・コスタに依頼された。ルシオ・コスタは、世界遺産にもなっている、ブラジルの首都ブラジリアを設計した建築家だ。ルシオ・コスタは、ル・コルビュジエのスイス学生会館にインスピレーションを得て、ブラジル学生会館を設計したと言われている。ルシオ・コスタは親交のあったル・コルビュジエに、このプロジェクトの実行を依頼した。ところが、ル・コルビュジエが設計変更をしてしまい、ついにルシオ・コスタがプロジェクトから手を引くという事態になった。
さて、こちらも管理員に入館料1€(2024年8月時点)を支払って、内部を見学させてもらった。見学できるのは1階部分だけ。それでも、広々としたホールの窓ガラスの開口面が大きく、かつカラフルで驚いた。椅子やテーブルが離れたところに配置されているので、それぞれ上手に使えば多様な利用の仕方があるのだろう。気になったのは、床と天井の高さがホール内で異なるように感じたこと。これは、寄宿棟の下をくぐる部分を少し低くしているからのようだ。 また、ホール内には、ルシオ・コスタやル・コルビュジエ、1997年~2000年の改修工事について説明した展示パネルのコーナーがあった。かなり大掛かりな改修をしたようだが、1959年当時の家具を備えた部屋を復元したそうだ(見学対象外)。
さて、ホールからエントランスに戻って逆側に進むと、館長室などがある管理ゾーンになる。そこに至るまでの寄宿棟の下をくぐる部分に、なんとも不思議な空間があった。曲面のガラス窓が2カ所あり、その外側は屋外になるが、まるで美術館のような印象を受けた。
緑の扉の部屋が館長室。壁画の奥に図書室がある。天井の明かりとりからたっぷりの日差しが入る。
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