テラスハウスやらせ疑惑、番組の責任問う声 制作側の奢りもあるか
出演した「テラスハウス」が発端となりネット上で誹謗中傷を受け、5月23日に自ら命を絶ったプロレスラー・木村花さん(享年22)の件で、演出面をはじめフジテレビなど番組側の責任を問う声が日増しに高まっている。
やらせ証言する声が出るもフジテレビは否定
母親で元プロレスラーの木村響子さんは「週刊文春」はじめメディアのインタビューで、自殺の原因とされる同番組内での「コスチューム事件」などに関し、花さんが番組側からやらせをあおられたと話していたことなどを明かした。「コスチューム事件」とは、共演者の一人、小林快さんが花さんの試合用のコスチュームを誤って洗濯した結果、縮んで使用不可能となり、花さんが抗議して小林さんの帽子をはたくシーンで、これが誹謗中傷を呼ぶ大きなきっかけとなったといわれる。 今月2日発売の「週刊文春」に、花さんが番組スタッフから「ビンタぐらいしたらいいじゃん」などと言われたと響子さんが証言したという記事が掲載された。花さんはレスラーである自分がビンタはできないため帽子をはたいた、などと響子さんに打ち明けていたという。一方で、今回の件について検証中というフジテレビと制作会社イースト・エンタテインメントは指示があった事実は出てきていないと否定している。しかし「週刊文春」によると「コスチューム事件」の相手役となった小林さんは、花さんとの初デートシーンで「おっぱいとか触ったら」などと番組ADから軽いノリで指示された(小林さんは断った)、(番組側は)SNSでの炎上を狙っていた、などと番組のやらせについて証言している。もし事実だとすれば、演出の範囲を超えてセクハラレベルの話だろう。
「自戒が必要」人気番組と制作スタッフの奢り
果たして番組の現場では何があったのか。何らかの意図的なコントロールが行われていたのか。このままいくと、言った言わないの水掛け論に終わってしまう可能性もある。 「リアリティーショーですからね、わざと悪役を入れて盛り上げたんでしょ」と話すのは、業界歴40年というベテランのテレビ関係者だ。 「僕はスタッフではないけれど、以前テラハの子たちの撮影現場に居合わせたことがあって、そのときは相当な部分やらせでしたよ。次に誰がどうして、こうやって、っておおまかな流れを仕込んでいましたから。『台本はない』、『感情表現を捻じ曲げるような指示ではない』と言いたいんでしょうけど、あれが他のシーンでも常態化していたとすれば、実態は事実上のやらせと取られても仕方ないと思いますよ」 また、この種の番組出演ではタレントとして素人に近いか素人の出演者と番組側とでは、圧倒的な力関係の差があるという。 「花さんは自分が所属する団体や女子プロレスの人気につながるならと張り切っていた部分があるのでしょう。そのためには、ある程度は自分が悪役的な立ち回りになることも覚悟はしていたのかもしれません。ただ出演者と番組の関係性は、人気番組であるほど対等ではなくなります。そこに落とし穴があったと思う。台本や具体的指示がなくても、無言の圧に従ったほうがいいんじゃないかとなる場合は十分あり得ます。プロレス団体はプロレスの仕事には関与しているでしょうが、テレビ出演の細かな内容については知らなかったと思いますよ。まさか本人がそこまで悩む事態に陥るとは思わなかったんじゃないですか。普通、SNSなんてコメント全部見てたらシャレにならない。真面目で、むしろ気が強かった子だったのではないでしょうか」(同テレビ関係者) そして番組制作側には、人気番組ほど過度の演出につながるリスクもあるという。 「この番組の制作会社さんとスタッフさんがどうかは別として、一般論として、放送局より力のある制作会社もあります。そんな中で人気番組になるとスタッフにも勘違いが生じ、ゴールデン何本かやると人間変わっちゃうんです。昔話ですが僕も大河ドラマの裏を張って日曜夜やってたときは財布にウン百万円入っていて、そのときプライベートの人間関係は最悪だった。趣味で入っていたサークルから、ある日『あなたは態度が悪くてみんなからスポイルされているから今後、考えて欲しい』って言われて(笑)。だって、カフェに入っても人々が自分が手がけてる番組の会話をしたりしているわけです。奢りが出ちゃうんです。『テラハ』に限らず全体の話になりますが、もしそんな全能感持ったスタッフが演出したらと思うと、この業界には行き過ぎちゃうリスクが常にあるんですよ。自戒が必要です」(同テレビ関係者) いまは誹謗中傷が炎上するネット時代でもある。ましてリアルとフィクションの境界線を極限まで曖昧にすることによって成立するリアリティーショーの場合、番組側に一層の注意が必要であることは言うまでもない。 (文:志和浩司)