世界に「春よ、来い」日本を代表する和楽器奏者らリモートセッション
コロナ禍において世界的に生活環境が変化し、音楽も演奏を実演できる機会を設けることが困難な状況が続いている。そんな中、日本を代表する和楽器演奏家たちが松任谷由実の「春よ、来い」をリモートセッションした映像が30日、インターネットの動画サイトYouTubeの上妻宏光チャンネルで「和楽器奏者リモートスペシャルセッション『春よ、来い』」として公開された。
和太鼓奏者・林英哲「日本の楽器の声、言葉を聞き取っていただけたら」
この企画は三味線奏者として知られる上妻が、「医療従事者の皆さんが日々闘ってくださり、また、皆さんお一人お一人が試行錯誤や努力をされ、耐え忍んでいらっしゃる。私が身を置く音楽の業界に至ってもホールでの演奏会を開くにはまだまだ厳しく、リモートセッションを通じて世界へ日本のすばらしさを伝える手段としてもぜひ実現したいと思いました」と、和楽器演奏家たちに声がけをしたものだという。上妻は「加速するインターネット社会を通じて発信できるデジタルな部分と、アナログに人がつながりセッションするからこそ表現でき、感じることのできる両側面から、演奏で参加いただいたアーティストの皆さん、そして編曲で参加いただいた伊賀拓郎さんとの熱い想いをお届けします。そして、世界に穏やかな日々が訪れますことを心より願っております」と、コメントを寄せている。 セッションに参加した世界的な和太鼓奏者の林英哲は、「上妻くんからのお誘いで、すばらしい皆さんと、まるで生共演したような嬉しいリモート体験でした」と演奏の感想を話し、「世界中のウイルスと闘う人々に『春よ来い、良き日よ早く来い』、この日本からのメッセージが伝わるように奏者全員が気持ちを込めた演奏です。日本の楽器の声、言葉を聞き取っていただけたら」としている。 雅楽演奏家の東儀秀樹は、「さまざまなジャンルを持った日本の伝統音楽がこうしてひとつになる。これはお互いの誇りを称え合うにもただ楽しむにも大きな充実感がある。こんな時だからこそ、心と心の結束や絆が深まる。こんな時だからこそ、コミュニケーションを大切にしたくなる。音楽がどれほどそれらを実らせてくれるものなのか、音楽がどれほど人にとって大切なものか、改めて仲間たちと実感できました」と、今回のリモートセッションに確かな手応えを感じた様子。 “和楽器の貴公子”と異名を取る尺八奏者の藤原道山も、「今年は春を楽しむ間もなく終わってしまいました。コンサートなどの舞台活動、公演がまったくなくなってしまった状況下でしたが、上妻宏光さんからのお誘いで、すばらしい日本音楽のアーティストとともに、やっと春を楽しむことが出来た、嬉しい思いでいっぱいです」と、感想を語る。 コロナ禍にあっても、演奏する喜びやセッションする楽しみ、音楽の情熱を少しでも世の中に届けたいというアーティストたちの想いが伝わる動画となっている。「春よ、来い」を選んだ理由は、“命の芽吹く日本の「春」のように、世の中が動きを取り戻し、穏やかに四季の訪れを感じられるよう”という願いから、とのこと。日本の魂が詰まった和楽器で、演奏者たちの想いが人々に届けられる。 ■演奏参加者(五十音順) 上妻宏光(津軽三味線)、辻本好美(尺八)、東儀秀樹(笙/篳篥)、中井智弥(二十五絃箏)、林英哲(和太鼓)、藤原道山(尺八) (文:志和浩司)