「チョウを追いかけると天国にいける!」40すぎて昆虫採集にどハマりした元ビーパル編集者の激白
人はなぜ野山でチョウを追いかけてしまうのか? 1980~1990年代に活躍したビーパルOB・宮川 勉が、40歳前後で目覚めたという「昆虫採集」の楽しみをご紹介。 【写真18枚】ビーパルOBが40歳前後で目覚めたという「昆虫採集」。ベニヒカゲ、コヒオドシなど、出会った蝶を写真で見る 今回は夏の北海道へチョウ採集にでかけたときにふと出合った「天国」について語ります。
「虫屋」って何だ?
人生で大事なことはすべて夏に学びました。 6月に入ると、私は北海道の林道を思ってそわそわしてきます。 本州では梅雨の真っ最中ですが、そこでは春と夏が一緒に来たような季節。花が一斉に咲き誇り、チョウが羽化する季節です。北海道のチョウは、短い夏を知っているのか、さまざまな種類が週替わりで羽化します。 虫屋にとっては、初夏の北海道とは、じつに天国そのものなのです。 あっ、「虫屋」というのは、昆虫愛好家のことです。虫屋は自嘲とプライドをもって自分たちをそう呼びます。 虫屋とひと言で言っても、カミキリを専門とする「カミキリ屋」、ガを専門とする「ガ屋」など、興味の対象ごとに細分化されています。 しかし虫屋の入口は「チョウ屋」とだいたい相場が決まっているようです。というのは、虫屋同士がフィールドで出会ったら、まず挨拶がわりに「いま何チョウを見た」とか、「何チョウの食草はこのあたりで見かけない」とか、まずチョウの情報を交わすものです。いわばチョウは虫屋の一般教養過程で、ここを経てからそれぞれの専門過程に進むのが通常のコースです。一般教養を経ないで、いきなり専門過程に行ってしまった虫屋だと、会話がもたないかもしれません。 私もまたチョウから始まり、ガ屋を経て、甲虫屋になっています。と言っても、どれも中途半端で、表面をなぞっただけで、虫屋と名乗ることさえおこがましいのですが。
オオイチモンジを探しに北海道へ
そんな私ですが何年にもわたって、オオイチモンジというチョウを狙って北海道の林道に通ったことがあります。 オオイチモンジは、名前の通り焦茶色の翅に白く一筋の線が描かれている大型の美しいチョウです。本州の高山にも生息しているが、極めて希少であり、たいてい本州の産地で採集禁止になっています。それが北海道では標高の低い所でも見ることができます。それが羽化するのが7月なのです。 高山蝶はその他にもいて、たとえばベニヒカゲやコヒオドシといった高山蝶もさほど苦労しないで見られます。また北海道にしかいない特産種も飛んでいます。とりあえずこの季節、北海道の林道に行く機会があったらすべてのチョウに注意しなくてはいけません。 目にするものがすべて未知という高揚感は、人生にそうありません。 虫屋はそれを再び味わいたくて、同じフィールドに通い続けることになるのですが、やはり初めての感動には及ばないのです。 さいわい当時の覚え書きが残っています。それを読むと当時のわくわく感が蘇ります。