「不登校はおまえのせいだ」育児傍観者の夫に責められ…追い込まれたワンオペ母の苦境
「おなかが痛い」息子の行き渋り
小学校2年生の秋。ミノリさんの次男ナオキくんは朝、パジャマのまま体を二つ折りにしてうめいた。 「痛い、痛い、おなかが痛い」 学校で胃腸炎が流行っていたため移ったのかもしれない。そう考えた母に小児科に連れて行かれ、医師からもあっさりと「胃腸炎でしょうね」と診断された。薬を飲み、3日休んで登校した。また2週間後に痛くなった。前回と同じ小児科が処方した薬を飲み、同じように3日休んだ。ところが2週間経つと、再び「おなかが痛い」と言い出した。 「ちょうど2週間ずつ空けて定期的に具合悪くなるって何なん? もしかしたら胃腸炎とかじゃないのかも」 他の要因を疑ったミノリさんは小児科を替えた。仕事を持ちながらも時間をやりくりして必死に対応した。 ここまでの経過を話すと医師は「一度撮っておきましょうか」と言い、腹部のレントゲンを撮られた。診察室に再び戻ると「お母さん、これ、心的負担ですよ」と告げられた。やっぱりな。何の驚きもなかった。ただ、ストレスを貯めた原因はすぐに思い至らなかった。 「何かあったん?」 母に問いかけられても、小学2年生は言葉にうまく出して答えられない。もじもじしながら「給食のとき、隣の人が咳すんねん」と言う。そんなことで? と突っ込みたくなったが、そのまま受け止め担任に席を変えてもらった。だが、行き渋りは残った。
息子の「心的負担」の原因
「心的負担って何やろう?」 元気に学校に通っていた息子の周辺にいる大人や子どもたちの姿を思い浮かべるうちに、ひとつ思い当たった。 2年生になって少年野球のチームを替えていた。1年生で入った少年野球チームは監督がやさしかったのに、友達に誘われ強豪チームに移籍したら怖い監督にあたってしまった。ボールを取れずにエラーしたら「何しとるんや!」「取れるやろ!」と怒鳴られた。有形暴力はないものの暴言がひどかった。萎縮して辛そうに首をすくめる姿を思い出した。そのうえ高学年のチームに低学年からひとりだけ入ることになってしまったのも良くなかった。ナオキくんは仲良しの友達同士で楽しく野球をしたいだけなのに、まったく知らない上級生と過ごす時間が苦痛だったのかもしれない。 ポジションはピッチャー。まだ下級生なのにたくさん投げさせられたためか、3年で肩を疲労骨折してしまった。痛む肩はサポーターで固定されているのだが、シャツで隠れているためか、じゃれ合うなかで肩を触られ痛い思いをした。そんなことも重なって、3年からは行ったり行かなかったりと「五月雨登校」(ミノリさん)が始まった。 5月の連休明け、夏休み明け。1週間行くものの、また1週間休んだ。クラスメイトから「あの子不登校なんやで」という感じでジロジロ見られたことも「心的負担」につながったのか、小学4年の1学期から完全に不登校になった。