石破茂政権は「30年前の永田町の悲劇」と同じ道を辿っている…「政治とカネ」に翻弄される日本の政治家の愚かさ
■30年前の「経済無策」を繰り返してはならない 90年代初頭、これほど政治が混乱しているあいだにも、日本経済はバブル崩壊という滑り台を滑降していく。結党宣言の時期から、21行が聳(そび)え立っていた大手銀行が跡形もなくなる金融危機まではあと5年。あと講釈ではあるが、永田町も霞が関も経済政策には目もくれずに「政治改革」に明け暮れていたのは残念なことだ。この時代にも、日本の政治に「戦略的な経済政策」が不在であることが見えてくる。 結党宣言から30年が経過したいま、細川の旗揚げに対して、とかくの批判もあるだろう。政治的な血筋の良さ、恵まれた生活環境だからこそできたのだとする指摘もある。 ただ身近で接した者のひとりとして痛切に思うことは、あの「田中型政治」時代は、だれもが「こんちくしょう」にひれ伏していたなか、とにもかくにも手をあげたことは評価されるべきである。共同通信の幹部が口にしたように「角栄の子分」の書生論であったかもしれないが、何もしないで長いモノに巻かれていた永田町で暮らす人間に、細川を批判する資格はないだろう。 政治改革は確かに必要だ。しかし、そればかりを焦点にしていると経済政策が停滞する。言うまでもなく政治改革だけでは、国民の懐は潤わない。デフレ脱却が達成できるかの大切な時期に、90年代初頭のような経済無策を繰り返してはならない。 ---------- 鈴木 洋嗣(すずき・ようじ) 文藝春秋 元編集長 1960年、東京都生まれ。1984年、慶應義塾大学を卒業後、文藝春秋入社。『オール讀物』『週刊文春』『諸君!』『文藝春秋』各編集部を経て、2004年から『週刊文春』編集長、2009年から『文藝春秋』編集長を歴任。その後、執行役員、取締役を務め、2024年6月に同社を退職し、小さなシンクタンクを設立。『文藝春秋と政権構想』(講談社)はその活動の第一作となる。 ----------
文藝春秋 元編集長 鈴木 洋嗣