エイズとデルタのメモワール(回顧録)~パームスプリングス(前編)【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】
■マンハッタンでの過ごし方 コールドスプリングハーバーの研究集会で感じた「日本からいかに世界とたたかうか?」という気概については、この連載コラムでも触れたことがある(53話)。 G2P-Japanのコアメンバーであり、その中でも私といちばん付き合いの古い熊本大学のⅠとは、昔から折々にそんな話をしていた。熊本大学に着任する前、Ⅰはアメリカ・ミネソタ州のミネアポリスにあるミネソタ大学にポスドク(博士研究員)として留学していた。当時の私にとって、コールドスプリングハーバーの研究集会に参加し、その後にIが在籍するミネソタ大学に訪問する、というところまでが、毎年5月の海外出張の定番コースとなっていた。 まずはマンハッタンでⅠと合流し、グランド・セントラル駅併設のハイアットホテルにチェックイン(相部屋)。メジャーリーグをテレビ観戦し、それに飽きたらウルフギャング・ステーキハウスかベンジャミン・ステーキハウスでステーキを食べる、という、年に一度の贅沢な夜を過ごす。 翌朝は、ホテル近くの「Grumpy」というカフェでアイスラテを飲み、グランド・セントラル駅から地下鉄と電車を乗り継いでコールドスプリングハーバーに向かう。研究集会が終わった後は、半日だけマンハッタンで過ごし、翌日の便でミネアポリスに向かう。Ⅰがミネアポリスに留学中の5月は、だいたいこんなサイクルが定番になっていた。 ■ミネアポリスで学んだこと この連載コラムでも何度か触れたことがあると思うが、私はいわゆる「海外留学」をしていない。海外志向がなかった訳ではない。それはむしろ常人のそれよりも勝っていたようにも思うが、いろいろなタイミングの妙で、海外に留学をしないまま現在に至っている。 どのようにしてそのギャップを埋めようと試みたかについてもこのコラムで触れているが(53話)、このミネアポリス訪問もそういう、ギャップを埋めるための試みの一環だった。